「だれですか?」
「これはどういうことだ、DIO」
「おそらくスタンド攻撃を受けたのだろう……。見たところ10代前半、といったところか」
「記憶もか?」
「おそらくな」
小さくなった名前は怯えて部屋の隅に寄り距離をとっている。
「戻るのか?」
「時間が経てばな」
名前はカーズとDIOが話している隙に家を飛び出した。
「夜になれば帰ってくるだろう」
すぐに元に戻るだろう、そんなに焦ることはないとカーズもDIOも高を括っていた。
***
「名前はどこに出掛けたんだ?」
仕事から帰って来た吉良が2人に尋ねると、DIOは事もなげにテレビを見ながら答えた。
「スタンド攻撃を受けて出ていったぞ」
「言っている意味がわからない」
「スタンド攻撃を受けて小さくなった名前が記憶も10代前半まで戻り、わたしたちをを不審者だと思って出ていったのだ」
本を片手にカーズが答えると吉良は驚きの声をあげた。
「なっ!?じゃあそれから戻ってきてないのか?」
「ああ、そろそろ戻ってきてもおかしくはないのだがな」
「……もう外が薄暗いな。探しに行ってくる」
「待て、私が探した方が早い」
カーズは翼を広げ、窓から飛び立っていった。カーズにとって名前を探しだすのは造作もないことで、すぐに見つかった。外灯がぼんやりと照らす公園のブランコに座り、俯いていた。
「おい、帰るぞ」
カーズを見ると怯えだし、再び逃げようとする名前の腕をしっかりと掴み、家の方向へと引っ張る。
「誰か、たすけっ、」
叫ばれては面倒だ。カーズは口を押さえ声を出せないようにするとぽろぽろと涙を流す名前を家に連れて帰った。
「名前は?」
「公園にいたぞ」
「っ、やだ……はなして……」
嫌がる名前の手を引く姿は誘拐そのものだったろうと吉良は思った。
家に連れ帰ったものの、さきほどから膝を抱えてすすり泣きをしている名前に住人たちは心を痛めた。しかしこのまま外にいさせてもそれはそれで危険だ。名前が戻るまでここにいさせるしか方法はなかった。
「おい、どうした?やけににぎやかだな」
コンビニの袋を持って帰って来たディアボロに吉良は事情を説明した。
「そうだったのか、名前」
反応を示さない名前の側に歩み寄り、頭を撫でる。すると拒絶するように膝を抱える力を強め、ますます小さくなった。
「腹減ってるだろう?名前の好物があるぞ」
食べるよう促すが頑なに拒み、ディアボロは小さくため息をついた。気まずい空気が流れ、長い沈黙が続いた。
「名前、そろそろ寝たほうが……」
吉良が名前の前に膝立をついて肩に触れようとするのをカーズが止める。
「眠ったようだな」
「ああ……」
カーズが独り言のように呟くと、吉良は疲れたような表情をして答えた。
ディアボロは音を立てないよう押し入れから布団を出し、その上に名前を寝かせた。DIOが顔にかかった髪をそっと退けるとあどけない顔で眠っている。彼はいとおしそうに名前の頬を撫でた。