嫉妬(露伴)

「じゃあまた明日な」
「じゃあね、仗助」

いつものように仗助と露伴の家の前で別れた。鍵を開けて露伴の家に入ろうとした時、ちょうど露伴が顔を覗かせた。

「あ、ただいま」
「……」

露伴は何も言わずに私の手を強く引き、私は引き摺られる形で後に続いた。

「っ、痛い」

痛みを訴えても聞き入れてもらえない。何か怒らせるようなことをしてしまったのだろうか、考えを巡らせていると居間に着いた。するとすぐに私はソファーに押し倒された。

「……露伴?」

電気がついておらず部屋が薄暗いため、露伴の表情が窺えない。そんななか肩に込められる力に顔を歪める。

「露伴、痛い」
「うるさい」

咎められているような言い方に黙らざるを得なくなる。露伴の頭が首元に埋められたかと思うときつく吸われた。肩を押さえていた手はいつの間にか私の制服の中に入り込み、腹を撫でまわされる。いつもよりも性急な動作に少し怖くなり、止めさせようと露伴の手を掴んだ。

しかし事態は反って悪化した。露伴は私の両手首を片手で掴み、頭の上で一纏めにされた。もう片方の手は自身のベルトにかけられた。

事に及ぶのは初めてではない。しかし、今までこのように雑に扱われたことはなかった。身体を無理矢理抉じ開けられていくような感覚とそこまで思い詰めるようなことをしてしまったという罪悪感から気が付くと涙が零れていた。



僕は名前が涙を零しているのに気付き、一気に罪悪感に襲われた。本当はこんなことをしたいんじゃあない。数分前に窓からみた名前と仗助の楽しそうな姿に嫉妬したのだ。仗助の方が名前と付き合いが長い。それにあんな笑顔を向けられている仗助が妬ましくなって、怒りの矛先を名前に向けてしまった。名前を自分のものしたい、そんな気持ちが暴走して気が付いたら名前を泣かせてしまった。こんな僕が名前といる資格はない。そう思い身体を起こし立ち上がる。

「今日は帰ってくれないか?」

僕はそう言い残して居間を後にした。
次の日、名前が家に来ることはなかった。あんなことをしたのだ、もう来ないだろう。

その時チャイムが鳴った。インターホンで確認すると康一くんだった。ドアを開けると力強く開けられ康一だけではなかったことに気付く。そこにいたのは僕の嫌いなあいつだった。

康一くんはドアを開けさせるためだけに呼ばれたようですぐに僕の家を後にした。

「何の用だ、君がここに来るなんて珍しいじゃないか」
「俺だってお前の家になんか来たくなかったけどよ〜友達が困ってるからよ〜」
「……」

仗助は一旦外に出て人の手を掴み引っ張る。そしてその人を僕に押しつけてきた。名前だった。

「俺の用はこれだけなんで失礼します」

そう言い残し、仗助も帰って行った。気まずい空気が流れる。先に口を開いたのは名前の方だった。

「あの、この前のこと謝りたくて……でも露伴が怒っていた理由わかんないし……どうしたらいいかわかん、なく、て」

だんだん名前の目に涙がたまっていく。僕は名前を強く抱きしめた。

「この前のことは君のせいじゃあない。……僕が、悪かった。すまない……君とあいつの姿を見て、イラついて当たったんだ。悪いことをしたと思ってる」

名前が僕の背中に手を回してきた。まだ僕は嫌われてないのだろうか。

「私には、露伴だけです」

目を合わせて言い切る姿に年下ながら敵わないと思った。どちらともなく唇を重ねた。

bkm