昼寝(ディアボロ)

「ディアボロさん」
「なんだ」
「掃除機かけたいので隅に寄ってください」
「……」
「髪の毛掃除機で吸っちゃいますよ」

渋々、といった感じで畳から身体を起こすと怠そうに台所の方へ移動した。

「ありがとうございます」

畳の上に転がっているペットボトルや本を退かし、掃除機をかける。

「終わりましたよ」

ディアボロさんは綺麗になったばかりの畳に再び寝転ぶ。桃色の髪の毛が畳の上で広がる。

「名前」
「何ですか?」
「座れ」

手招きされ、隣に腰を下ろすと肩を掴まれ身体を畳に押し付けられる。

「!?」

手をつく間もなく畳に倒れこみ、後ろから抱きつかれた。身を捩ったが手も巻き込まれて抱きしめられているため、どうすることもできない。

「ど、どうしたんですか」
「寒い」

窓はさっき閉めた。掃除のために換気したせいで部屋は少し寒いかもしれない。

「離れてください」
「断る」
「炬燵の方が温かいですよ」
「名前がいい」
「……何ちょっと口説いてるんですか」

耳元で笑う声が聞こえ、どきりとする。抵抗も諦めたところでディアボロさんの頭が私の肩口に埋まる。首元にかかる吐息がこそばゆい。
うう。さすがに一緒に暮らしているとはいえ、こんなことをされると恥ずかしくなる。向こうは何とも思ってないだろうけど。

「まだ他にも掃除しなきゃいけないところあるんですけど」
「後でいいだろう」
「後回しにしたくないんです。変わりにやってくれるならいいですけど」
「わかった」
「……本当ですか?」
「昼寝が終わったらな」
「ならいいですけど……」

背中から伝わってくる体温が心地いい。このまま眠気に身を委ねてしまおう。ディアボロさんが掃除するって言ってるし。


話し声が聞こえ、何事かと目を開けると吉良さんに怒られている正座姿のディアボロさんがいた。

bkm