「おはようございます、吉良さん」
「おはよう」
起きて身体を震わせながらこたつに入る。
「うー、寒い」
「雪が降ったからね」
「え?!」
窓を見ると桟に雪が積もっている。どおりで寒いわけだ。一足先に炬燵に入っていたディアボロさんも今日はセーターを着ている。
「イタリアも雪降るんですか?」
「北部はかなり降る。中部と南部はその年によるがな」
「へ〜!」
石造りの家や石畳でできた街並みが雪に覆われているところを想像した。きっと美しいだろう。
想像していると、カーズさんが炬燵に足を入れてきたため、冷たい空気が流れてくる。
「っ!カーズさん!?」
「なんだ」
「服着ないんですか?寒くないんですか?」
「寒くないぞ」
カーズさんはいつもの服装で手を伸ばして私の首を掴もうとしてくる。見るからに冷たそうだ。
「いいです!カーズさんが温かいのわかりましたから!」
「触っていないだろう」
離れようとすると、腕を掴まれ反対側の手が私の首を目掛けて伸びてくる。冷たさを想像しながら目を瞑った。
「あ、」
冷たくない。再び目を開けると逞しい腕が離れていく。
「朝ごはんできたよ」
飛び込んできた吉良さんの声で私は食器を用意するため、立ち上がった。
***
「それじゃあ、行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」
吉良さんを見送ったあと、私は吉良さんに頼まれた買い物をするべく、コートとマフラーを着た。
「もう行くのか?」
「午後から雪が降るみたいなので午前中に済ませてきます。では行ってきますね」
「私も行く」
カーズさんはいつの間にか着込んでいて、行く気まんまんだ。
雪が降ったせいか、人通りは少なく静かだ。あまりに静かでこの世界に自分とカーズさんしかいないような気分にさせられる。
住宅街の途中に公園があり、砂場のあったところには雪だるまが鎮座していた。懐かしい。子供の頃はよく作ったっけ。
思わず雪をすくい、雪だるまの隣に雪うさぎを作る。たまたま近くに植えてあった七竈の実と葉をとり、目と耳にした。
「うさぎか」
「そうです!」
完成したうさぎに満足して眺めていると、横から大きな手が伸びてきて、手を握りこまれた。手のひらから暖かさが伝わってくる。
「カーズさん?」
「手が冷たい。もうそろそろ行くぞ」
手を引かれるが歩幅は私に合わせてくれている。それが嬉しくて、手を握り返した。