08

名前があの男と付き合っているからといってどうこう言うつもりはない。ただの勘だがあの男には少し注意したほうがいいかもしれない。

次の日私を迎えに来る時間を見計らって名前がいるであろう入り口付近が見える場所で待ち伏せる。予想どおり名前の傍に男が近寄っていく。男の笑みが歪んで見え、その首には蛇が巻き付いている。
蛇はゆったりとした動きで男の首から名前の首へ巻き付く。名前が蛇に対して何の反応も示さないあたりスタンドなのだろう。

男が耳元で囁くと名前は男の手を取り、指を絡めるように手を繋いだ。店を出ていく。これがスタンドの能力なのだろう。そうでなければ私の迎えをそのままにどこかへ行くはずがない。
男は人通りの少ない道を通り、建物の中に入っていく。
後を付けると1つの部屋から薄暗い灯りが漏れでている。音を立てないように埃っぽい廊下を歩き、部屋に入ると男が名前の肩口に顔を埋めているところだった。

「名前をどうするつもりだ?」
「へぇ、僕の後をつけてきてたんだ」
「何のために名前をさらった?」
「名前はついでだよ。目的は君を殺すことだ」
「その蛇でか?」
「やっぱり僕と同じスタンド使いだったんだね。君が勝負しているときに背後に何かいると思ってたんだ。でもそのスタンドじゃあ僕は殺せないね」
「そうだな。……それでその蛇はどうやって人を操っているんだ?」
「死ぬ前に教えてあげるよ。僕は、アラン・マクレガー。スタンドを通して話すと人を従わせることができるんだ」
「そうか、知ることができてよかった」
「知ったところで何もかわらないけどね。それじゃあ自殺してもらおうかな、この銃で」

マクレガーは懐から銃を取り出し私の足元に投げた。

「なあ、その前に賭けをしないか?私はギャンブルクレイジーだから最後に賭けをしたいんだ」
「いいよ。でも死ぬ前に汚点を残してもいいの?」
「私は負けるつもりはない……。Mr.マクレガーが私を殺すことができたら勝ちだ。私が勝ったら君の魂をもらおう」
「いいね。僕の魂を賭けるよ」
「グッド!君がどんな戦い方をするのか楽しみだよ」
「余裕だね。その顔を恐怖面に変えてやる……。         」
「……」

部屋に銃声が響く。マクレガーの背後の壁に銃弾がめり込み、目を見開いた。どうして効かないのか、といったところか。私のスタンドが発動し、マクレガーの魂がコインになった。
あのスタンドは能力を行使する相手に言葉が聞こえないと意味がないらしい。私は耳栓を抜き取る。普段はスロットをする時に用いるものだが、偶然にしろ持っていてよかった。名前の身体は力が抜けて私の方に倒れてきた。少し肌蹴た鎖骨に紅い跡が残っている。
名前を抱きかかえてマクレガーの抜け殻の残る家を後にした。

bkm