定休日2

「今日はどこに行くんですか?」
「コーヒー豆とフルーツの仕入れだ。とりあえず車に乗ってくれ」

助手席に座り、ゆっくりと車が走り出す。

「そういえば、さっき作っていたのは新作のケーキか?」
「はい、今度みんなに試食してもらおうってポルナレフと話してました」
「それは楽しみだな」
「その時はコーヒーもお願いしますね」
「わかった」

仕入れ先に着き、シャッターの開いている薄暗い倉庫に足を踏み入れる。奥の方で足音が聞こえ、パチリと電気のつく音がした。時間差で倉庫が明るくなる。

「お、アヴドゥル!待ってたぜ……と今日は名前も一緒か!」
「スピードワゴンさん、お久しぶりです」
「しばらくぶりだな、元気か?」
「おかげさまで」
「店の方は上手くいってるか?」

アヴドゥルさんの眉が少し動いた。

「もしかして、近くにできた店の影響か?」
「えぇ、客層が重なっている上にあちらの店の方が品数も多くてですね」
「そうだったか……まあ気を落とすな。あんたらの店の方がいいところだってあるんだから。これが注文していたコーヒー豆とフルーツだ」
「いつもありがとうございます」
「私この豆で淹れたコーヒー大好きです」
「ありがとよ。またいい豆が入ってきたら連絡するぜ」
「ありがとうございます、それじゃあまた」
「おう、またな!」

相変わらずなスピードワゴンさんに元気づけられた。

「後は買うものあります?」
「少し私用があるんだが、時間は大丈夫か?」
「大丈夫です」
「じゃあ本屋に寄らせてもらう」
「また本をお探しなんですか?」
「あぁ」

前にアヴドゥルさんの家にお邪魔したとき、図書室と言われても疑う者はいないくらいの本の多さに驚かされた。

「今日はそれほど時間がかからないから待っててくれ」
「了解です」

アヴドゥルはほんの5分も経たないうちに戻ってきた。ビニール袋から明るい色の表紙が透けて見える。

「今日は古書じゃあないんですね」
「開けてみてくれ」
「えっ?いいんですか?」
「名前にも見てほしいんだ」

ビニール袋から取り出すと、カフェの特集の雑誌だった。

「これって」
「"Cafe de nero"が載ってるぞ」

DIOさんの店の名前だ。目次にも載っている。ページをめくると店の写真とコメントが載せられている。昼はカフェ、夜はダーツバー。あんな美人な店員さんがいるなら男のお客さんも多そうだ。

「名前、家に送っていった方がいいか?」
「店で大丈夫ですよ。忘れていたことを思い出しました」
「根は詰めすぎないようにな」

雑誌を閉じた私の考えを察したのか、アヴドゥルさんが言った。

「はい」

お互いに言葉少なになり、ラジオの放送だけが車内に流れた。

    

「ありがとうございました」
「こちらこそ手伝ってもらってありがとう、助かったよ」

倉庫から出たところで、店に電気が付いていることに気が付く。

「あれ、まだ店に電気が付いてますね……」
「ポルナレフが居るんじゃあないか?」

こんな時間まで……。私も頑張らないと。作業員用の裏口から入ると、そこには承太郎、花京院、ポルナレフ、ジョースターさんの姿があった。

bkm