「名前、Dolcetto o Scherzetto?」
突然現れたかと思うと、ディアボロがイタリア語らしい言葉を発した。
「え?」
「じゃあScherzettoだな」
突然俵担ぎにされて持ち上げられる。
「日本語で言ってくださいよ!それから下ろしてください!」
足をばたばたさせていると寝室へと連れていかれ、畳の上に下ろされた。ディアボロさんから距離をとろうと後ずさると、かかとに何かが触れた。振り返ると、手錠、ろうそく、注射、メイド服などがたくさん置いてある。
呆然としてそれらを眺めていると、天井に吊るされていた電球の灯りが、何かに遮られたように翳り、そちらへ顔を向けるとディアボロさんが私を見下ろしていた。逆光で表情は見えないがきっと悪魔のように口元を歪めて笑っているにちがいない。
「っ!ディアボロさん……何を」
「悪戯に決まっているだろう」
逃げようとすると手首を掴まれてしまう。
「う、」
どうしよう、逃げられない。
すう、と襖が開きDIOさんが寝室に入ってくる。
「DIO、準備はできたのか?」
「ああ」
これから私は2人に食べられてしまうんだろうか。
心臓がうるさく、掌が汗で湿ってくる。
「どうだ」
DIOさんが得意げに見せたのは、ジャックオランタンだ。
「……」
「まあまあだな」
今日はハロウィンだったのか。じゃあこの衣装は……。
自分の勘違いだったとわかり、身体から力が抜け、へたりこむ。
「名前、どうかしたのか?」
不思議そうに私を見る2人に「何でもない」と力なく答えた。