催眠術(カーズ・吉良・ディアボロ)

「ディアボロ、何を見てるんだ?」
「吉良か。これから催眠術師が人を操るところだ」
「くだらないな、信じているのか?」
「こいつがスタンド使いならありえるかもな」
「……それはないだろう。私には見えない」
「スタンドはカメラに映らないかもしれんぞ」

吉良が溜め息をついたところに、俺達の前に来た。

「どうしたのだ?」
「催眠術師が人を操っているところを見ていたんだ。ディアボロは信じているらしい」
「スタンド使いの可能性があると言っただけだ」
「あるぞ」
「何だって?」

カーズが言うと究極生物だけに有り得るような気がしてくる。

「やってみろ」
「誰にかけるんだ?」

2人の視線がこちらに注がれる。

「……こっちを見るな!名前でいいだろ!」
「ディアボロ、残念だが名前はまだ帰って来ていない」
「諦めろ」

ニヤリと笑った究極生物が大きな足取りで歩いてきた。

「ただいま帰りました……3人とも何をしているんですか?」
「おい!帰ってきたぞ!」
「何を聞く?」
「……名前が今一番したいことだ!」
「面白そうだ、名前こっちを向け」
「え?」

カーズが名前と目を合わせると、名前の目がぼうっと虚ろになる。

「名前が今一番やりたいことをしろ」

そう言うと名前は部屋の隅に置いてあったバッグを持って出ていこうとした。ちょっと待て。咄嗟に吉良が名前の手を掴み、引き留める。

「名前はここにいるのが嫌なのか……?」

吉良が傷ついたような声で呟いた。

「貴様のせいだぞ。名前の手を気持ち悪いほど撫でまわすからにちがいない」
「カーズ、君の方こそ名前に嫌がられていないとは言わせないよ。前に一緒に風呂に入ろうとしただろう」
「それは貴様も同罪だろう」

目の前で面倒な口論が始まった。

「じゃあ本人に聞いてみればいいだろう」
「それは……止めておこう。名前が後で嫌がるだろう」
「うむ」

途端に弱気になるとは。殺人鬼も究極生物も名前のこととなるとかたなしだ。

「とりあえず、名前を元に戻せ。話はそれからだ」

カーズが名前の腕を軽く叩くと目に光が戻り、周りをキョロキョロと見回し、目をしばたかせた。

「あれ?私……なんでバッグなんか……」
「名前、何かしたいことはないか?」
「えーと……あ!私コンビニにアイスを買いに行こうと思ってたんです!行ってきます!」
「……」

bkm