定休日1

いつも俺より早く店に来るはずの名前の姿がない。

「珍しいな、名前が遅いなんて……」
「いるよ」
「うおっ!」

名前がシンクの陰から顔を出す。

「びっくりさせんなよ」
「ごめんごめん」

そんなつもりじゃあなかったんだよ、と言いながら身体を起こす。名前はガラス製の小さいボウルのような容器を手にしていた。

「それ使うのか?」
「うん、そうしようかなあと思ってた」
「レシピは決まったのか?」
「まあね。ポルナレフは?」
「決まってるぜ」
「じゃあお互いに作ってみようか」

背中合わせで厨房に向かう。名前が何を作るのか気になるところだが、俺も作らないとな。

    

「よし、」
「早っ!もうできたのかよ」

早々に名前は作り終えたようで使い終わった容器等を片付けはじめている。

「俺もできたぞ」
「本当?じゃあ後ろ向くよ」
「いいぜ」

嬉しそうに振り向き、俺が差し出した皿を見ると目を輝かせる。

「カヌレ?」
「ああ、食べてみるか?」

一口サイズに切り分けると一切れとり、口に運ぶ。もぐもぐと小さい口を動かすと次第に顔が綻んでいく。やっぱり作ったものを人に喜んで食べてもらえるのは嬉しい。

「美味しい!」
「当たり前だろ?それより名前は何を作ったんだよ?」
「なんかポルナレフのお菓子の後に見せるの気が引けるなあ……」
「そんなことねェよ、俺は名前の作るお菓子好きだぜ」

そう言うとそっと俺の前にさっき見つけた容器を差し出す。中には一口サイズのスポンジケーキやラズベリーが層状に敷き詰められていて上には生クリーム、さらにその上にはふんだんにイチゴがのせられている。
横から見ても綺麗で彩りがある。

「トライフルか」
「うん……どうかな?」

スプーンで一口食べると、生クリームの甘味とイチゴの酸味が相まってちょうどよい甘さになっている。

「うめぇ」
「よかったー」
「今度承太郎達にも食べさせてメニューに入れるかどうか話し合おうぜ」
「そうだね。でも緊張するなあ」
「俺が旨いって言ってンだから自信持てよ」
「ありがとう」
「ポルナレフに名前、来てたのか」
「アヴドゥルさん、どうしてここに?」
「果物やコーヒー豆の在庫を買い足そうと思ってな。後どのくらい残っているか確認に来たんだ」
「そうだったのか、ちょうどいいところに来たな。これ食べてみてくれよ」

アヴドゥルはカヌレとトライフルをそれぞれ口にする。

「どちらも美味いな」
「だろ?」
「今度ジョースターさん達にも食べてもらおう」
「さっきその話をしてたところだ」
「そうか。名前、これから買い物に付き合ってもらえるか?」
「私はいいですよ。ポルナレフは?」
「まだ試してみたいレシピがあるからやめておく」
「そっか、わかった」
「では行くか」
「はい。行ってきます!」
「いってらっしゃい」

bkm