「名前、これを飲んでみろ」
DIOさんからマグカップに入った飲み物を渡された。
「これは?」
「ジュースだ、いいから飲め」
そういって後頭部を押さえられ口にマグカップの中身が強制的に流し込まれる。甘くて美味しい。でも今まで飲んだこともないような味だ。
「何のジュースだったんですか?」
「カーズが作ったジュースだ」
ろくなことが起こる気がしない、と思った。この予感は30分後に的中することになる。
「まあ悪くないな」
DIOさんは私の頭についた耳と尻尾を見て言った。
「これ、いつまで続くんですか……」
さっきから耳を触ってくるDIOさんの手が鬱陶しくなってきたため距離を取る。
「効果が切れるまでだ」
「……カーズさんはどこに居るんですか?」
「ここだ」
「出掛けたのではなかったか?」
「さっき帰ってきた。そろそろ名前が猫になっていると思ってな」
カーズさんは私を見た途端唇が弧になる。やばい、逃げよう。立ち上がると考えを読まれていて2人が襖の前に立ち塞がる。
どうしてこういうときだけ息があっているのか。
「2人とも、退いてください」
「外に出てどうするつもりだ?」
「その姿では人目を引くぞ?」
「う、」
確かにその通りだ。コスプレか、あるいは変質者と思われるのがオチだ。ただでさえカーズさんたちは近所の人からの視線がアレなのにそこに私まで含まれるのはごめんだ。もう遅いかもしれないけど。
「それよりも家にいた方が賢い選択だと思うのだがな」
DIOさんが近付いてきて私の両手を掴む。
「放してください!家に居ますから私から離れてください」
「 猫の扱いがわかっていないな」
「私は猫じゃあ、」
カーズさんが私を膝の上に乗せて顎の下を撫でる。そんなもの効くものか、と思っていたがなんだか気持ちよくなってきた。なんだこれ。カーズさんに屈したくないのに。
身体が勝手にカーズさんの膝に頭を乗せ、腹を向ける。
「動物が腹を見せるのは服従の合図だったな」
DIOさんがニヤリと笑いながら私の腹を撫でる。悔しいけど気持ちいい……。
「随分と気持ちよさそうだな」
「そんなこと、ないです」
認めるのはなんだか癪だったけど、だんだん瞼が下がってくる。眠気に逆らえなくなってついに意識を手放した。