「これ、最近気になってるんだよね」
コンビニに寄ったときにそう言いながら名前が指さしたのはピンクダークの少年だった。
「うちにあるから読みに来るか?」
「いいの?ありがとう」
部屋に通すと名前がうきうきしながら本棚を眺めている。1巻を手にした名前は俺のいるところへ寄ってきて足の間に腰を降ろしたかとおもうと、身体に寄りかかった。
「っ、名前……」
「だめ?」
「いや」
だめなわけないだろ。名前はそのまま漫画を読みはじめた。いつもよりも距離が近くて一緒に漫画を読んでいても落ち着かない。
「これ面白いね!」
「あぁ、」
1巻を読み終えた名前が立ち上がろうとすると、小さく悲鳴をあげた。
「痛っ!」
名前の髪が俺の制服の金具に絡まってとれなくなっている。
「おい、動くなよ……今とるから」
この長さでは名前が振り向いてとるのは無理がある。そっと髪に手を伸ばすと柔らかい上に1本1本が細い。絡まりやすいはずだ。
「もっと頭近づけろよ、このままじゃ痛いだろ」
「ん」
距離が縮まり甘い香りが漂う。
「ねぇ、まだ?」
「少し待ってろ」
絡んだ髪を外そうとしたがなかなかとれない。
「切っちゃう?」
名前が冗談まじりに言う。
「もったいねーだろ、もっとこっちに来いよ」
「わ」
腹に腕をまわして引き寄せると急に大人しくなった。
「ほら、取れたぞ」
「あ、ありがとう」
「何でぎこちないんだよ」
髪の隙間からちらりと覗く耳が赤い。もしかして、と思い肩を掴んでこちらを向かせると顔を赤らめて口元は手で覆い隠している。
「見ないで……恥ずかしい」
「俺に寄りかかってる時は緊張してなかったのに何でだよ」
「緊張してたよ……緊張しないわけないじゃん」
これ以上ないほど顔を真っ赤にして答えた名前が可愛くて思わず抱きしめると再び髪が絡まり怒られた。