「じゃあ今日は私とアヴドゥルさんですね」
エジプトへの移動中、見張りをする順番がまわってきた。
「じゃあ頼むぜ」
ジョースターさんたちは寝袋にくるまり、寝る準備をしている。10分ほどでみんなの寝息が聞こえてきた。やはり疲れているのだろう。
「名前、こっちに来て暖まったほうがいい。砂漠の夜は寒い」
「はい」
言われた通りに私はアヴドゥルさんの隣に座り焚き火の前で暖をとった。ふと夜空を見上げると普段見るよりも何倍もの数の星が輝いている。
「星が綺麗ですね」
「ああ、名前の住んでいる国は夜も明るいからな」
「そうですね、こんなにたくさん星を見たのは初めてです」
「そうか……寒いのか?」
少し身震いした私を見て尋ねる。
「少しだけ……」
「これ使うか?」
そう言ってアヴドゥルさんが使っていた毛布のうちの1枚を私に寄越す。
「でも、アヴドゥルさんが」
「私は大丈夫だ」
「じゃあ、一緒に使いませんか?」
「なっ?!それはダメだ!」
「なんでですか?」
「なんでって……」
私は言葉に詰まる。それは、君に密かに思いをよせているからだ、なんて言えない。私と名前は年が離れている。彼女が私を好いていることは行動に現れている。しかし両思いだからと言って自分の感情で彼女を縛るようなことはしたくない。彼女にはこれからの未来があるのだ。
「何故って、私が男で君が女性だからだ。そんなことを軽々しく言うもんじゃあない」
「軽々しく言っているつもりはありません。アヴドゥルさんだから言っているんです」
「っ、」
「ほら、これでお互い寒い思いをしなくて済みますよね?」
名前が強引に毛布を私に半分かけ、さっきより近くに座る。彼女の身体が私に触れている。
「こら、」
咎めようとしたが彼女は唇の前で人指し指をたてる。
「騒ぐとジョースターさんたちが起きてしまいます」
「……」
にこりと微笑む姿にどきりとする。焚き火の灯りで照された顔がいつもより大人っぽく見えた。
「怒ってますか?」
「いや、……今日だけだからな」
私はぼそりと呟いた。彼女は嬉しそうに私の腕をぎゅっと握った。