「ダメだそんなこと!」
「このままだと死ぬわよ!」
「その方が何倍もましってもんだ!」
スピードワゴンは目が覚めたら吸血鬼になっていた。私の首を凝視していたため、吸血をすすめたらこうなった。
「とにかく離れてくれ!我慢ができなくなる」
「我慢する必要はないわ、好きなように吸えばいいじゃない」
そこまで拒む理由がわからない。そんなに辛いなら私の血を飲んでしまえばいい。私にとっては辛そうにしているスピードワゴンの表情のほうが辛い。スピードワゴンに近付くと、スピードワゴンは後退りをする。何だか拒まれている感じがして悲しい。スピードワゴンが後退し、ベッドの端につまづいて倒れこんだ。チャンスとばかりにスピードワゴンに馬乗りになり、彼の身体の自由を奪った。
「私の血を飲むまで退かないから」
きっぱりと言い切ると、捨てられた犬のような表情に変わる。
「離れてくれ……」
「だめ」
スピードワゴンが血を飲みやすいように首元の釦を外し拡げる。するとスピードワゴンの喉が上下に動いた。覆い被さるようにスピードワゴンの唇に自分の首を宛がう。
「ほら、」
「すまねェ」
謝罪の声が聞こえたかと思うと、ズブリと牙が首に食い込んで行くのを感じた。
「っ」
チクリと痛みが走る。しかしそれも一瞬のことだった。傷口からジンジンと身体を侵していくような快楽の波が押し寄せる。声を出すのは流石に恥ずかしいため指を口にくわえ、歯を立てて我慢した。ようやくスピードワゴンの飢えが満たされたようで、首から牙が離れる。
「すまねェ」
「だから気にしてないって」
「だが……」
「気にするなって本人が言ってるのよ!これ以上言ったら口訊かないから」
「わ、わかった!……ありがとう」
「どういたしまして」
そう言って私はスピードワゴンの髪を犬を撫でた。