護衛の任務中、ムーディー・ブルースで標的の姿を再生して敵を誘き寄せる。すると案の定騙された奴等が銃を持って部屋に襲撃を仕掛けてきた。わざわざ窓から姿を見えるようにしているのだから何か裏があるとは思わないのか。お粗末だと思いながら名前に銃を弾き飛ばされ、尻餅をついた敵を眺めた。
「もう、部屋の隅に立ってないで手伝ってよ!」
気絶した男を跨いでこちらへ歩いてくる。そしてむすっとした表情で俺を見上げた。
「別に俺が何もしなくても余裕だろ」
「……そうかもしれないけどさあ」
そう言うと満更でもなさそうに口元が緩み出した。実際名前の腕を信頼しているからこそ身を任せられる。
「終わったならさっさと帰るぞ」
「うん!」
名前の前を歩いていても上機嫌なのが伝わってくる返事だった。
***
任務を終えてブチャラティへの報告を終え、伸びをしながら自室に足を向けると後ろから声を掛けられた。
「オイ、これから用事でもあるのか?」
「ないよ……?」
アバッキオは私の腕を掴み、背中を押して強制的に部屋に足を踏み入れることになった。
「ねぇ、」
「少し黙れ」
肩を掴みドアに押し付けられる。アバッキオの髪がさらりと流れたかとおもうと私の右肩に頭を押し付け、背中と腰に腕がまわる。任務を終えた後は大抵こうだ。普段ブチャラティ達といるときとは違って甘えてくる。こんな姿を見れるのは私くらいだ、と優越感に浸りながら背中に腕をまわした。
付き合っているんだし別にいつでもこうしていいのに、とは思うが口にすると眉間に皺を寄せること間違いなしなので心に閉まっておく。
そろそろと手を伸ばし、頭を撫でると腕に力がこもった。
「嫌だった?」
「いや、そのままでいい」
私もアバッキオとこうしているのは好きだから胸に頭を預けて目を瞑り、身を任せた。
しばらくそうしていたかとおもうと、突然抱きかかえられて身体がソファーに沈む。アバッキオは隣に腰掛けて上半身を私の方に倒した。いわゆる膝枕だ。
「疲れた、1時間経ったら起こせ」
「うん」
「勝手に居なくなるなよ」
手首をがしりと掴まれて強い眼差しで私を見る。この前膝枕をしていたときに、目を覚ましたら私が居なかったことを根に持っているようだ。私は指を絡めて手のひらを合わせた。
「そんなことしないよ」
アバッキオは満足したようでフ、と少し笑い瞼を閉じた。