「ダニエルさん、チョコレート禁止です!」
いつものようにチョコレートの包みを剥がし始めたダニエルさんの手からチョコレートを取る。
「名前、」
「そんな顔しても今日は渡しませんから」
部屋を出ていこうとすると後ろから抱きしめられた。
「だめか?」
「っ、だめです……病気になりますよ」
「……じゃあその代わりに名前をもらうよ」
「なっ?!」
ダニエルさんが私の首にかかっている髪を退けるとちゅ、と軽く口付ける。驚いて振り向くと、ダニエルさんは楽しそうにくすりと笑った。どうしよう。チョコを渡せば済む話だけど、健康に悪いし……でも……。
迷っているうちにダニエルさんの顔が迫ってきた。恥ずかしくて視線を下げるとダニエルさんの服の胸ポケットに銀色の包み紙が顔を覗かせているのを見つけた 。
「あっ、」
「ああ、チョコレートが残っていたか」
その包み紙を取ろうと手を伸ばすと手首をやんわりと包まれた。
「そのチョコレートを取るなら自分自身を差し出すと解釈するよ」
「っ、」
***
名前が伏し目がちになる。反応が可愛らしくてチョコレートのことはどうでもよくなった。唇をそっと撫でるとこれ以上ないほど頬と耳を赤く染める。
「それで、名前はどちらを選ぶんだ?」
視線をさまよわせ悩んだ結果、名前の手には胸ポケットのチョコレートが握られていた。
「そうか」
名前の手に握られた包み紙を取る。さっきから俯いていた名前がようやく顔をあげた。
「あ!食べないんじゃ……」
「こっちのチョコレートはね」
「!っ、」
さきほど手に持っていたチョコレートが溶けて名前の指についている。舌で掬うと身体を強張らせた。
「名前、おいで」
おずおずと私の背中に手をまわした名前にそっと口付けた。