※ヤンデレ
「ねぇ、リゾット……別れてほしいの」
食事中に思いきってきりだすと、フォークとナイフを動かしていた手が止まった。彼はどんな顔をしているだろう。彼の顔を見ることができない。
「何故だ?」
「……それは」
私は彼に隠し事をしている。それは私がパッショーネの一員だということだ。付き合うことに決めたのは彼に押しきられた、というところもある。でも私自身リゾットが好きだったからだ。しかしその結果、月日が経つにつれて、彼への申し訳なさといつ彼の命が危ぶまれるかという心配が募る。
それよりだったら、私と別れて平和な生活を送ってほしい。
「ごめん」
「……わかった」
「じゃあ、今日中に荷物片付けるね」
これで少し肩の荷が降りたような気がした。食べ終えた食器を流しに運ぶ。涙が零れたが後ろからリゾットの気配がして慌てて涙を拭った。
「名前、すまない」
首に痛みがはしり、そこで意識がなくなった。
***
気を失った名前を暗殺チームの拠点近くのアパートに運ぶ。いつか、こんな日が来ると思っていた。
名前は時折何かを言い出そうとして、辛そうな表情をしていたのは知っていた。きっと優しさ故になかなか言い出せなかったのだろう。しかし俺の側から居なくなるということに堪えられない。
涙の跡が残った頬をそっと撫でる。
「ん……っリゾット?!」
驚き身体を起こすと俺と距離をとった。少し前までは嬉しそうに抱きついてきたのが遠い昔に感じる。ベッドに乗り上げ、そっと抱きしめたが、名前が俺を抱きしめ返すことはなかった。その代わりに胸を軽く押し返される。
「だめです、リゾット、さん……」
その一言でもう元には戻れないのだと悟る。ならばせめて。
名前の手首を取って手錠をかけ、もう片方の輪をベッドの柵に繋いだ。足にも同様に枷を嵌める。女らしい手足にそぐわない頑丈な枷だ。
「外してください……」
泣きそうな顔で俺を見る。俺たちは今までうまくやってこれたと思う。だが、今それが崩れ去ろうとしている。
「側にいると誓うなら直ぐに外してやる」
突き放すような口調で言うと、ぽたりぽたりと大きな涙の粒が頬を濡らす。胸が痛むが、これは名前に対する罰だ。
「どうするんだ?」
「…………」
「時間はある。ゆっくり考えろ」
そう言い残して部屋を後にした。