「名前、吉良と喧嘩したのか?」
「うん……」
飲み会のことがあって以来気まずくて会話を交わしていない。
「このDIOに任せろ」
少し心配だけど、落ち込んでいたこともあって心強く感じた。
「それでどうするんですか?」
「話は吉良が帰ってきてからだ」
私は吉良さんが帰ってくるのを落ち着かない気持ちで待っていた。いつもの時間になり、吉良さんが居間に入ってきた。ちらりとDIOさんを見ると私を見て頷く。
どうするのだろう、と思っていると私はDIOさんに担ぎ上げられ、空いた方の手で吉良さんの手を掴み洗面所に押し込まれた。DIOさんはばたりと扉を閉め、開かないように何かを置いたような物音がした。開けようとすると何かにつっかかって開かない。
「閉じ込められましたね……」
「ああ……」
***
あれ以来名前と口をきいていないこともあってこの狭い空間にいるのが気まずい。さっきから名前は隅の方に座り込んで何も言わない。様子を伺っていると足の先を寒そうに丸め込んでいる。裸足で薄着だから寒いのだろう。
「使いなさい」
スーツの上を脱いで名前に渡す。
「吉良さんは?」
「私は大丈夫だ」
名前はスーツを胸元に引き寄せ黙ったが、決意したように立ち上がって私の隣に腰を下ろした。
「一緒に使いましょう」
そう言ってジャケットを半分私に差し出した。名前が歩み寄ってくれたことに心底ほっとした。
「この前は済まなかった」
「いえ、私も考えが浅かったなって……っ」
ぐう、と名前のお腹が鳴り、恥ずかしそうにお腹を押さえた。
「DIO、そろそろ開けてくれないか」
「……」
「DIOさん!開けてください」
返事が返ってこない。ドアノブを回したが扉は開かない。
「もしかして、ドアの前にものを置いたまま出掛けたんじゃ……」
結局私たちはカーズさんが開けてくれるまで閉じ込められたままだった。