吸血鬼(ホル・ホース)

DIOが作った薬のせいで、一時的に吸血鬼になった。

「嬢ちゃん、苦しそうだな。大丈夫か?」
「うるさい。早く出て行ってよ!」

吸血鬼になって4日、何も食べずに過ごしそろそろ限界だった。ホル・ホースにあたったことは申し訳ないが、吸血鬼になって鼻が敏感になったせいか、彼から血の匂いがする。きっとどこか怪我をしているのだろう。ホル・ホースの血の匂いが私の本能を刺激する。このまま本能に任せて血を飲んだらきっと幸せだろう。それにホル・ホースは女に優しいからきっと怒らない。でも、私の人間としての理性が行動を押し留めている。ホル・ホースの肌に目を向けると目が釘付けになった。早く出て行ってもらわないと。

「ごめん。ちょっと具合が悪いだけだから、休めば良くなるよ」
「そう言ってもう4日目になるんだがな、俺の目には悪化しているように見えるぜ。いつまでそうしているつもりだ?」

ホル・ホースの言いたいことはよくわかる。このまま人の血を飲まなければ、理性を失うか飢え死にするかの2択だろう。それでも、同族から血をもらうというのは受け入れがたい行為である。

「見てられないな」

ホル・ホースがずんずん私に近付き、私の顔を自分の首筋に押し付けた。さらに首もとの服を掴み、一層肌を露にした。その光景を見た私の鼓動が高まった。








俺が首もとを晒けだしたことで、名前の決意は揺らぎつつあるようだった。先程から首から視線を反らそうとしない。あと一押しというところか。俺は小刀を取りだし軽く首を傷つけた。血が溢れて肌を伝う。彼女が俺の肌に口をつけて飲み始めた。

「っ、」

溢れた血だけでは足りなかったようで傷にぐりぐりと舌を押し付ける。それでも足りなかったのか、俺の首に噛みついた。4日も食事を我慢していたのだ。こうなるのも仕方がない。牙が俺の血管に到達し、突き破られた感触があったかと思うと、全身を内側から撫でられるような快楽に襲われた。

「嬢ちゃんっ、……っ、んん、」

堪えきれずに声を漏らすと彼女が我に返ったようだった。

「ごめんホル・ホース。ごめん」
「別に俺は気にしちゃあいないぜ。また欲しければいつでもやるよ」
「……」
「まぁそのうち戻るだろ。それまでの辛抱だ」

頭を撫でてやると少し安心したようだった。


bkm