からかう(シュトロハイム)

※男装夢主



私はこの部屋の主、シュトロハイム少佐に壁際に追い詰められていた。

「お前は女なのだろう?」

確かに私は女だ。私の家は代々軍人の家系として名が知れている。だが、残念ながら私は女として生まれた。兄弟もいないため、私に迫られた選択は男装をして軍人になるということだった。幸い今まで平穏にやってこれた。しかしこの男のせいで平穏が崩れ去ろうとしている。この場面をどう切り抜けるか。

「いやいや、そんなことありませんよ。あまり筋肉質ではないのでよく女に間違えられて困ります」

苦笑しながらそう言うと、相手が笑いその場をやり過ごすことができた。そう、今までは。この男は私の回答に納得していないようだ。そして冒頭に戻る。

「ほう、それでは確かめてもよいということだな」

私は絶句した。予想もしていなかった返事に、背中に冷たい汗が流れる。シュトロハイム少佐の手が私の首もとの釦に手をかけた。

「私はそちらの趣味はありませんので」

笑いながら手を退けようとしたが、少佐の手に力が籠る。上官なのであまり下手なことはできない。

「それは私もだ」

そう言って少佐は口の端をゆがめて笑った。この人はもう気付いているにちがいない。少佐が私の服を脱がしていく。上着を脱がし終えると、この状況と室温でひやりとした。今度は少佐の手がワイシャツの釦にかかる。これで私はおしまいだな、そう思い目を瞑った。

「……フッ」

うっすら目を開けると少佐は笑っていた。からかわれていたのだ。一気に顔が火照りだす。

「私に用事だったのではありませんか。こんな下らないことをするために私をお呼びになったわけではないでしょう?」

表情を隠すように俯いて問いかけた。

「仕事が入った。私とお前でメキシコに行く。3日後に出発だ」
「あの、」
「お前が女だということは漏らすつもりはないから安心しろ」
「……了解しました。それでは失礼します」
「ああ、…………名前」

出ていこうとドアに手をかけた私に近付いてくる。ぐっと距離が狭まり、先程の距離まで近付いた。

「さっきの顔はなかなかよかったぞ。まるで女のようだったな」
「っ、失礼します」

私は上着を持って足早に部屋を後にした。部屋を出て行く際、少佐が口角を上げて見ていたことを私は知らない。



bkm