朝起きるとポルナレフは吸血鬼になっていた。
「な、なぁ名前」
「はい?」
「悪いんだが血を少しくれないか?」
「……」
「嫌ならいいんだ!無理いって悪かったな」
「嫌じゃないです!……ただ、血を吸う間、手を握っててもらえませんか?吸血されるの、初めてで……」
「わかった。じゃあここに来い」
ポルナレフが自分の膝をぽんぽん叩く。恥ずかしいが渋々ポルナレフと同じ方向を向いて座った。ポルナレフが私のお腹に右腕をまわす。私はぎゅっと抱き寄せられてポルナレフに包まれている感じがした。左手を私の左手に重ね指を絡める。私を労っている気持ちが感じられ自然と体温が上昇する。
「痛かったらごめんな」
首筋にポルナレフの息がかかり身体が強ばった。それに気づいたのかポルナレフは私を抱く腕に力が籠る。ポルナレフの牙が私の肌に食い込んでいき、ぷつりと私の肌に穴が空いた感覚がした。少しだけ痛かったが予想していた程ではなかった。気を抜いていると、じゅるりとポルナレフが皮膚ごと血を吸った。血管が集中している部分を吸われ、身体が昂る。吸血鬼に血を吸われると気持ちいいという話があるが真実なのだと自分の身をもって思い知ることになった。
「は、っう、ん、」
漏れでる声を抑えることができなくなってきた私は空いてる手を口に押し当てた。
「ん、んっ、はぁ」
部屋には私の漏れでる声とポルナレフが血を吸う音と呼吸だけが響いていた。ようやくポルナレフが満足したのか、私の肌から牙を抜いた。私は声を出さないようにするために疎かになっていた分の酸素を取り入れた。
「悪い、痛かっただろ」
ポルナレフが噛み跡を撫でる。
「思ったほどじゃなかったから大丈夫」
そういうとポルナレフは私の身体を強く抱きしめた。
「あ、朝食の準備しなきゃ」
立ち上がると視界が歪み、床に座り込んだ。どうやら貧血のようだ。
「悪い。朝食は俺が作る」
そう言って台所へ向かうポルナレフの服を掴んだ。
「朝食は後でいいから一緒に居て」
ポルナレフは一瞬きょとんとした顔をして、微笑んだ。
「Oui.」