「ただいまー」
ドアを開けると玄関でカーズさんが既に玄関に立っていた。初めのうちは驚いたがカーズさんはとても耳がよくて私が家に向かって歩いてくる音が聞こえるのだと言っていた。
いつものように玄関でお帰りのキスをする。これは人間の愛情表現だ。究極生物のカーズさんにとってはどうなんだろうか。
唇が離れるとじっと私を見つめる。
「考え事とはいい度胸だ」
今度は後頭部を押さえられて荒々しく口を塞がれた。ぬるりと舌が入り込み、ゆっくりと咥内を舐める。どれくらいそうしていたかはわからないけど、私が何も考えられなくなって身体の力が抜けてしまうくらいの長さだった。
「っはぁ、」
カーズさんの胸に凭れながら息を整える。その間に私は抱きかかえられてソファーに降ろされた。
「それで何を考えていた」
「えーと、カーズさんて究極生物じゃないですか。だからなんで私にキスするのかなあ、と」
表情を見ると呆れられているような気がする。そりゃあ究極生物に劣るのはわかってるけどそんな顔しなくても。
***
私が口付けているにもかかわらず、名前は何を思い悩んでいるのかと思ったがそんなくだらないことだとは。
名前が嬉しそうな顔を見せるからだと言うことに何故気付かないのか。やはり名前は阿呆だ。そんなこともわざわざ口に出さなくてはいけないのか。
ーーそれに人間の愛情表現も悪くないと感じる自分がいる。
***
「名前が嬉しそうな顔をするからだ」
「……」
そんなに嬉しそうにしているんだろうか。そりゃあ嬉しいけど改めて指摘されると何だか恥ずかしい。そんなことを考えていると顎を掴まれ軽く引き寄せる。
「な、なに?」
「今そんな顔をしているぞ」
にやりと笑ってカーズさんが言う。完全にからかわれている。
「じゃあカーズさんはどうなんです、ん」
唐突に口付けられて私の問いは呑み込まれた。でもキスするときのカーズさんの目も微笑んでいるような気がしてまあいいかと思った。