cappuccino

カプチーノを淹れたカップを持って名前の部屋に向かう。ドアをノックしたが返事が返ってこない。

「名前、入りますよ」

ドアを開けると名前の姿はない。もしや、と思いソファーを回り込むとぐっすりと眠っている名前がいた。

机に置いてある報告書には手がついていない。このまま寝顔を見るのも悪くないと思ったが名前が後々困るだろう。そう思い直して名前の肩を軽く揺する。

***

「名前」
「んー……ジョルノ……?」

これは夢なのだろうか。目を覚ますとソファーの脇にジョルノが立っていて、私の名前を呼んでいる。夢でもジョルノに会えるなんて幸せだなあ。

「ブチャラティに頼まれた報告書は済んだんですか?」
「報告書……ハッ!」

一気に現実に引き戻されてソファーから起き上がる。

「忘れてた……」
「確か今日中って言ってましたよね」
「うう、」

早くやらなきゃ、でもお腹すいたなぁ。窓を見ると外はとっくに真っ暗だ。

「ご飯食べてから」
「だめです」
「そんなー」
「食べたら眠くなるでしょう。折角名前が仕事をしていると思ってカプチーノを淹れたんですが」
「えっ?!」

机の上に置かれたカップが湯気をたてている。わざわざ淹れてくれたんだ。

「仕事をしないなら僕がいただきます」
「やる!ちゃんと仕事やるから!」

慌てて言うとジョルノが頬を緩めた。

「じゃあ、僕はこれで失礼しますね」
「あっ、飲み物ありがとう!」

もう帰っちゃうんだ……。ジョルノの背中を眺めているとドアの前で足が止まった。

「報告書が終わったら、ご飯付き合いますよ」
「……!」

そう言い残して部屋の戸が閉まった。私はすぐに机に向かって温かいカプチーノを飲む。するとちょうどいい甘さで思わず顔が綻んだ。これで頑張れる。報告書が終わった後のことを思い描いて仕事に取りかかった。

bkm