Wait for it!

私の付き合っている人は乙女だ。性別じゃなくて性格が、だ。
出掛けるときにどこに行きたいか尋ねると「名前の行きたいところがいい」とか、歩いているときに「手を繋ぎたい」とか言ってくる。本来それは私が言うべき言葉じゃないのかと思うほどに吉良さんは乙女だ。

今もそう。家でくつろいでいると吉良さんが私の名前を呼んでキスをねだる。

押し倒してその上に覆い被さると涙で潤んだ目で私を見てそっと目を閉じた。1度軽く唇を押し付けたあと、ぺろりと吉良さんの唇を舐めると薄く口を開けた。私は迷わず舌を捩じ込み、咥内を侵していく。至近距離で吉良さんの長い睫毛が震えているのがよく見えた。

「んん、っは、」

ようやく唇を離すと吉良さんの顔は真っ赤に染まっていて、もの足りなそうに私を見つめ、切ない声で「名前、」と私を呼ぶ。

私は黙ってワイシャツに手をかけ、裾をズボンから出そうと引っ張りあげる。後ろも同様にしようとすると吉良さんは自分から腰を持ち上げた。

「いやらしいですね」
「っ、名前がこんなことするからだよ」

ワイシャツの裾から手を這わせて直に肌に触れるととても熱かった。

「っあ、名前……」

ゆっくりと腹から胸にかけて撫で上げるとびくびくと身体が反応する。ついに吉良さんの眦から涙が零れ畳を濡らした。私は吉良さんの涙を拭い、半開きの口に指を入れる。

「ん、」
「舐めてください」

吉良さんは黙って舌を指に這わせる。ぬるり、とした暖かい感触が指先や指の付け根を掠め、私の体温が上がってくるのを感じた。

口から指を抜き取り、ネクタイに手をかける。わざと時間をかけて結び目をほどき、ゆっくりとネクタイを引き抜く。

「名前、早く……っ」
「だめです」

吉良さんがもどかしそうに顔を歪める。

「我慢できないんだ……」
「もう少し我慢してください。ちゃんと我慢できたらご褒美、あげますから」

そう言って真っ赤に熟れた唇を指でなぞり、口付けると大人しく私の唇を受け入れた。

bkm