きみが好き

旅の途中、一端休憩をとることになって車を近くの店の前に止めた。数時間ぶりの外で思い切り腕を空に伸ばす。

「んー」

身体を伸ばしていると花京院が私を呼ぶ。

「僕たちは買い物に行くけど一緒に来るかい?」

花京院の後ろにはジョースターさんと承太郎が待っている。ポルナレフの姿はない。

「あれ、ポルナレフは?」
「ポルナレフはあっちだ」

花京院の視線を目で追うとポルナレフがテラス席で休んでいた。

「んーと、私もあっちで休もうかな」
「わかった。じゃあ行きましょうか」

私は3人を見送り、店に入る。ポルナレフのむかいに座って店員に飲み物を注文した。

「名前……買い物に行かなくてよかったのか?」
「うん。ポルナレフは……疲れてるよね、さっきまで運転してたし」
「まあな」
「私も運転できたら負担減らせるんだけどなぁ」
「仕方ねぇよ。高校生だしな」

そう言って向かいの席から私の頭に手を伸ばす。大きな手が頭の上に乗り、優しく撫でられた。顔が赤くなっているのを悟られないようにテーブルに伏せる。

「名前も疲れてるのか?……ほら、飲み物来たぞ。これでも飲んで元気出せよ」
「ん」

身体を起こして飲み物に口を付ける。あ、美味しい。

「上手いか?」
「え?」
「そんな顔してる」

そんなにわかりやすいのだろうか。

「こうやって2人で話すの久しぶりだな」
「あ、うん。そうだよね……」

2人、という言葉を聞いてさっき落ち着けたはずの心臓がうるさく音をたて始める。さっきからポルナレフの顔を見れない。

「名前」
「何?っ、」

視線を下げているとポルナレフが私の顔を覗き込んだ。

「なんかボーッとしてるな。具合悪いか?」
「そんなことないよ!ただぼんやりしてただけ」
「そうか〜?具合悪かったらすぐに言えよ」
「ふふ、」
「何笑ってんだよ、こっちは真面目に言ってるのによ……」
「ポルナレフがやけに心配してくるからなんかお母さんみたいだなって……」
「全く……」

ポルナレフは私の頭を軽く叩いた。
何気なく時計に目をやると結構時間が経っていた。

「そろそろ行ったほうがいいかな」

テーブルに手をついて立ち上がるとポルナレフが私の手首を掴んだ。

「名前」
「!」
「まだ時間あるだろ、もう少しここに居ようぜ。ここならジョースターさんたちが来るのもわかる」

いつもより強めの口調だ。誘っているというより、もう決められたことのような。でもその申し出はすごく嬉しいし、もう少し2人で居たかった。

「いいよ」

そう言って再び腰を下ろすとポルナレフは満足そうに微笑んだ。

bkm