抱き枕(承太郎)

今日の部屋割りで承太郎と相部屋になった。

「おやすみ」
「ああ」

ベッド横の電気を消すと暗闇と静寂が訪れる。疲れているはずなのに中々眠れない。承太郎の方を向くと静かでもう眠ってしまったようだ。

電気を付けるわけにもいかないし夜風にあたろうとバルコニーに向かう。起こさないようにそっと承太郎の横を通ると見えない力に引かれてベッドに倒れ込んだ。承太郎に引っ張られたかと思ったが、眠った体勢のままだ。原因はひとつしか思い浮かばない。スタープラチナだ。

「眠れないのか」
「……起きてたの?」
「ああ、こっちに来い」

来い、と言いながら掛け布団を捲りベッドに引きずり込まれる。承太郎の隣に横になると、ぎゅっと抱き締められた。

「早く寝ろ」
「そんな無茶な……なんかこれって抱き枕になった気分」
「フ、」

私の頭上で笑う声がする。承太郎の胸に頭を押し当てると、とくとくと心臓の鼓動が伝わってきた。

「……ねぇ、心臓の音、」
「抱き枕は喋らねぇぞ」

うるさいよ、と言おうとしたら遮られてしまった。承太郎は態度には出さないが、意識しているのだと思い嬉しくなる。私はそっと目を瞑り承太郎の心臓の音に耳をすませた。早い鼓動がだんだんと落ち着いてきて、緩やかに脈打っているのがわかる。
そうしているうちにだんだん身体が温かくなり、瞼が重くなる。さっきはあんなに目が冴えていたのに。

「承太郎、ありがとう」

返事の変わりに頭を撫でられ、いよいよ私は意識を手放した。

bkm