心配性(露伴)

露伴先生の家に立ち寄ると玄関で露伴先生が仁王立ちをしている。顔が恐い。こんな顔をした像を歴史の教科書で見たような気がする。

「名前、」

いつもより低いトーンで呼ばれ、身体が強張るのを感じた。私の腕を掴むと居間に通されて正座をさせされた。

「はぁ、君は本当に自覚がないんだな」

何のことを言っているのかわからない。ぽかんとした顔をしていたせいか露伴先生の眉が少しつり上がった。

「君はわかってないみたいだから教えてやるよ。名前は意外と男にもてるんだ」
「へぇ」
「っだから、君を狙っているやつはあちこちにいる。その中の1人が君に変なことをしてもおかしくない」
「……それはつまり露伴先生が嫉妬しているということですか?」
「っ!どうしてそうなるんだ!僕が言いたいのは、用もないのに暗い時間にふらふら出歩くなということだ!この前だって夜に1人で歩いていただろ」
「それはアイスを買いに」
「うるさい!それに今だってこんなに暗いだろ」

露伴先生が私の目の前に来て、私の足に触れる。足痺れているのに。

「っ痛いです、先生」
「わざとだ」

ぎゅうぎゅうと足を押してくる。

「わかったか、次こんなことしたら、」
「もう、わかりましたって」
「本当か?」
「わかりましたからそんなに足を触らないでください、痛いです」
「……全く、君は夜道が怖くないのか?」
「特に」
「本当に女子高生か?」
「一応女子高生ですよ、これでも」
「はぁ……送っていく」

先生は私の手を引いて歩く。足がまだ痺れていて先生の歩調に追い付けない。それに気付いたのか、急にゆっくり歩いてくれた。

「大丈夫か?」
「ただ痺れただけですから。露伴先生は心配性ですね」
「……君に関してはな」
「嬉しいです」

そう言うと、露伴先生はそっぽを向いた。辛うじて見える耳が赤い。

bkm