久しぶりに名前が家に来て遊ぶことになった。一端家に帰ってから来ると言っていたのでいつ来るのかと居間でチャイムが鳴るのを待つ。しばらくしてチャイムが鳴った。
「ごめんね、遅くなって」
「いや、2階でゲームするかい?」
「うん!」
名前は嬉しそうにスリッパをぱたぱたさせて僕の後についてくる。
「あー遊ぶの久しぶりだね。学校ではいつも話してるけど」
「そうだね」
名前は部活があるからなかなか遊べない。でも今日は部活がたまたま休みになって急遽遊べることになった。
「このゲームなんだけど」
「赤、鬼?」
パソコンを起動させてゲーム画面を見せた。
「うん、とりあえずやってみればわかるよ」
これは赤鬼から逃げて屋敷から脱出するゲームだ。ただ赤鬼がランダムにいきなり追いかけてくるからそれが少し怖いかもしれない。
***
10分後、名前は僕の膝に乗ってびくびくしながらキーボードで主人公を操作している。
「ねぇ、ここで出てくる?」
「どうかな」
「……もう」
何回か赤鬼に捕まりゲームオーバーになった彼女は、怖がってキーボードをちょっとずつしか押さないようになった。名前が怖がっている姿が可愛くていつもは男勝りなのにやっぱり女の子だなあと考えていた。
その後も赤鬼が突然現れて名前が小さく声を漏らしたり、驚いて僕の胸に倒れこんだりした。
「典明、見てるだけじゃ退屈じゃない?少し代わろうか?」
「大丈夫だよ、続けて」
「うぅ、」
2時間後、おっかなびっくりしながらもゲームをクリアした名前は手を伸ばしてぐっと伸びをした。
「怖かった〜……楽しかったけど」
「怖がってる名前が面白かったよ」
「だっていきなり鬼が出てくるんだもん」
僕に寄りかかる名前を抱き締める。
「そろそろ夕飯の時間かな。ご飯食べてく?」
「もう帰ろうかな。お母さんに夕飯前には帰るって言っちゃったし」
「残念だな」
「また遊ぼうよ!」
「ああ。それじゃあ送るよ」
「ありがとう」
「じゃあ行こうか」
手を差し出すと名前はそっと僕の手を握りしめて歩き出した。人通りが少なく静かだ。さっきのホラーゲームのせいか、いつもよりも距離を詰めてくる名前が可愛いと思った。またホラーゲームを用意しよう。