「いい匂いだね」
「お帰りなさい!」
「ただいま」
「ちょうど焼き上がったところなんですよ」
「そういえば今日はハロウィンだったね」
僕はジャック・オ・ランタンの形をしたクッキーを見ながら言う。
「まだ味見してないので待ってください」
そう言うと名前は出来立てのクッキーを食べた。さくさくという音が聞こえて美味しそうだ。
「どうぞ」
僕は皿に積み重なっているクッキーを1枚取ろうしたところで手を止めた。
「……食べさせてほしいな」
そう言うと名前は少し顔を赤らめながらクッキーを口元に運ぶ。出来立てで温かいクッキーはバターが効いていて甘過ぎず美味しい。
「どうですか?」
「とても美味しいよ」
名前の不安そうな顔が一気に明るくなる。
「たくさんありますからどんどん食べてください」
「じゃあ遠慮なく」
僕は名前の手をとり口に含んだ。
「……!」
名前はさっきよりも顔を赤くしてぱくぱくと口を動かす。そんな姿を見ながらクッキーのかけらが付いている指を舐めた。指からかけらをとるように1本1本に舌を這わせる。
「吉良さんっ、」
涙目で名前が言う。あまりやり過ぎると泣き出してしまいそうだ。残念だが口から手を離す。
「お菓子くれないと悪戯しますよ!」
「いいよ」
「いいんですね?本当に悪戯しますからね?」
名前が近付いてきたかと思うと口に柔らかいものが押し付けられた。
「名前……」
「〜〜〜〜っ!」
自分でしたことに照れている名前が可愛いと思いそっと抱き締める。すると顔を見られまいと顔を強く僕の身体に押し付けて抱き付く。服越しに伝わる心臓の鼓動が速かった。