露伴先生と康一くんと私がカフェ・ドゥ・マゴでお茶をしていたときのことだ。
「名前と康一じゃねぇか!」
「仗助と億康じゃん」
仗助と億康は私たちの座っているテーブルに腰かけた。
「そういえば明日って課題あったっけ?」
「あったよ」
康一くんに私は答えた。
「ゲッ!やってねェ……何の教科だ?」
仗助が苦い顔をして尋ねる。
「数学だよ」
「あーあいつか、出さねェとうるさそうだな」
「俺もやってない……」
億康が体格に似合わない小声で呟いた。
「あの先生厳しいよね、やってないと居残りだと思う……!」
「どうした?」
私が身体を跳ねさせたため仗助が尋ねる。
「……何でもないよ」
私の脚に露伴先生の脚が絡まった。露伴先生を見ると普通に紅茶を飲んでいる。
「それでよォこの前課題を出すのが遅くなったときにあいつが……」
仗助の話に相づちを打っていると露伴先生の手が私の脚に触れた。スカートの上に乗せられた手がだんだん下りてきて裾を捲る。こんな場所で何を考えているんだ。そっと露伴先生の手を押さえたが、あまり意味をなさず内腿に手が伸びてきた。
「名前さん、顔赤いけど大丈夫?」
「……あ、風邪かも。私そろそろ帰ろうかな。お金、ここに置いていくね」
「うん」
「僕も帰る。じゃあね、康一くん」
私を追うように露伴先生もついてきた。しばらく歩いて仗助たちが見えなくなったところで露伴先生に声をかける。
「誰かに見られたらどうするんですか?!」
「別にいいだろ、付き合ってるんだから。それとも君はバレたら困るのか?」
「だって恥ずかしいじゃないですか」
「名前が悪い」
「……横暴です」
露伴先生の表情を見るとむくれている。そんな顔するほどだろうか。ふと、あることに気付いた。仗助たちが来てから露伴先生は一言も話してない。仗助と仲が悪いのはいつものことだが、普段は言い合いになっているはずだ。なのに今日は何も言わなかった。会話に入れなかったから……?
「露伴先生、今日家に寄ってもいいですか?」
「……ああ。珍しいな、名前から言うなんて」
「そういう気分なんです。それから」
「ン?」
「手、つなぎたいです」
「……仕方ないな」
露伴先生が少し頬を緩めて私の手を握った。