風邪(吉良)

朝から吉良さんは赤い顔をしている。

「吉良さん大丈夫ですか?顔が赤いですよ」
「ああ、風邪を引いたみたいだ。今日は会社を休むよ……」

そう言うと布団に入り横になった。

「何か欲しいものとかありませんか?」
「私が眠るまで手を握っていてほしい……」
「変なことしませんか?」
「私は病人だ……そんなことをする気はないよ」

確かにそのとおりだ。こんなときに自分の身の心配をするなんて……。吉良さんに言ったことを後悔した。

「そうですよね、すみません」

私は布団から出た吉良さんの手を握る。だが正直手持ちぶさたなので、本を読みながら吉良さんが眠るのを待った。ちらりと吉良さんを見るとばっちり目を開けて私の手を見つめている。怖い。

「いつまで私の手を見ているんですか」
「名前の手が綺麗だから……フフ」
「ずっと起きているならもう手を放しますよ!」

そう言うと吉良さんが悲しそうな表情をする。

「そんな顔しなくても……。とにかく、早く治さないともう手を触らせませんからね!」
「治ったら触ってもいいのかい?」
「……考えておきます」

bkm