慰められる(ホル・ホース)

「お前は私のものだ」
「私はお前のものじゃない!」
「思い知らせたほうが早いな」

DIOが一瞬で距離を詰めてきた。これがスタンドの能力なのだろうか。私の腰を引き寄せ、もう一方の手で顎を掬い固定する。私も吸血鬼にされるのだろうか。必死に暴れたが吸血鬼の、男の力に敵うことはない。DIOの舌が私の首をゆっくりと這ったかと思うと、一気に牙が食い込んでくる。

「っう、」

堪らず私は声をもらしていた。吸血されることでだんだん頭に霞がかかり何も考えられなくなる。抵抗することも忘れボンヤリしていると首からようやく牙が抜かれた。

「なかなか上手かったぞ、お前の血は」

血を吸われ過ぎたらしく、身体に力が入らない。ここから早く離れたいのに身体が動かない。私はDIOの微笑んだ顔を見ながら意識を手放した。







目が覚めると白い天井が見えた。DIOがいた部屋と違い光が射し込み明るい。まだ吸血鬼になっていなかったことに安心した。

「やっと目が覚めたか」

聞き覚えのある声の方を向くと、ホル・ホースがいた。

「な、んでお前が……っ」
「おいおい、まだ貧血気味なんだからいきなり起き上がるなよ」

ホル・ホースのいう通りだった。いきなり身体を起こしたため、視界がぐるぐる回っている。

「どうしてお前がここにいるんだ」
「DIO様に報告に行った時にちょうどお前が倒れたところだったもんで、世話を任されたんだ」
「そう、なんだ……ありがとう」
「大したことはしてないぜ。……それにしても、」

ベット脇に座ったホル・ホースが私の背中に手を回し引き寄せた。

「っおい!ホル・ホース、離せ!」
「いつまでそんな顔しているつもりだ、我慢する必要はない。ただ俺を利用すればいいんだ。こうしていれば顔も見られる心配はない」

ホル・ホースは私の頭を子供を宥めるように撫でる。

「ははっ、それじゃあ私がまるで、子供みたいじゃないか」
「まだ子供だろ、いくら普段大人びているように見えてもな」
「……うぅ、……っく」

涙が零れだす。怖かった。DIOに吸血されたとき、もう人間ではなくなったのだと思った。早く承太郎たちのもとに戻りたい。寂しい。堪えていた感情が堰をきって溢れだした。ホル・ホースは私が泣き止むまでずっと抱きしめてくれた。




bkm