「名前、今日はハロウィンだ」
「そうですね。あ、これどうぞ」
先手をとってカーズさんにお菓子を渡す。これで悪戯されずに済む。
「ム……」
カーズさんは悔しそうに私を見ている。勝った。
「それじゃあ私はこれで、」
「待て、トリックオアトリートなのだ」
「さっきお菓子渡しましたよね?」
「もう食べた……名前、菓子はもうないのか?」
にやりと笑いながら近付いてくるカーズさん。やばいやばい。早く逃げなきゃ。
「名前、ないのか?」
「ないです失礼しますさようなら!」
「待て」
カーズさんが目の前に立ちはだかり、出口が塞がれた。
「ないなら悪戯しなければなァ?」
「っ、カーズさんだってお菓子持ってないじゃあないですか?!」
「持ってない。だから私に悪戯してもいいのだぞ?」
ハロウィンってこんなイベントだっけ。気がつくとカーズさんの腿の上に座らされている。
「名前、遠慮は要らぬ。存分に私に悪戯しろ」
カーズさんにハロウィンを教えなければよかったと後悔した。