「そんな顔するなよ……」
デーボにやられた怪我の手当てをする名前の顔が険しい。濡れたタオルで血を拭き取り、ぎこちない動作で消毒を施す。
「っ痛!」
「我慢して」
「もっと優しくしてくれよ。俺は怪我人なんだぜ」
足の手当てが終わり、肩の傷の手当てを始める。消毒し終えて、名前の手が止まったかと思うと、肩にぽたり、ぽたりと冷たい雫が零れる。
「名前?」
振り向くと名前が手を顔に押しあて、涙を拭っていた。胸が締め付けられる。泣かせているのが俺だと思うと申し訳なくなる。
「心配かけて悪かった」
首の後ろに手をかけて頭を引き寄せ抱きしめる。シェリーが殺されたときのことを思い出す。名前の表情はあの日の俺と似ているだろう。あんな思いを名前にはさせたくない。ずっと笑っていて欲しい。……できれば、俺の側で。
「……気をつけるから」
「……怪我するなとは言えない。そんな甘い旅じゃないから。でも、自分を大切にして」
俺は玲を抱きしめる力をこめた。