仗助の部屋で一緒に宿題をやっているときのことだった。
「名前、露伴の匂いがする」
私に抱きつくと首もとに顔を寄せてすんすんと匂いを嗅いで少し顔をしかめる。
「さっき、露伴先生の家に寄ったから……」
そう言いかけたところで仗助の眉が少しつりあがる。
「ごめん、仗助嫌がるかなと思って」
「……俺は名前が一人であいつの家に行くほうが嫌だ」
「本当ごめんね」
そう言ってぎゅっと抱き締め返した。仗助の腕の力が強まる。
「この続き、しようぜ」
仗助はいつもより低い声で私に言った。
「続きって……」
「とりあえず、制服の上着脱げよ。いらいらする」
これ以上機嫌を損ねたくなくて、言われた通りにする。その間に仗助はベッドに腰掛けていた。
「膝に座れよ」
緊張のあまり少し覚束ない足取りで仗助の前に立つ。すると仗助は待ちきれなくなったのか私の腕を強く引いた。私は仗助の膝の上に乗るはめになる。相変わらず機嫌が悪い。
「名前、キスして」
思わぬ言葉に顔を赤くして下を向いていると顎を持ち上げられて無理矢理目を合わされた。
「早くしろよ。あんまり待たされると優しく出来なくなる」
私は覚悟を決めて仗助に口付けた。離れようとすると後頭部を強く掴まれて一層深く口付けられる。苦しい、そう思って少し口を開けるとぬるりとした感触が口の中に入る。それが仗助の舌だと気付く前に私の咥内を貪る。 いつもしているものよりも生々しい。
後頭部を押さえる手の力強さが改めて仗助が男の人なんだと思い知らされるような気がした。
だんだん息が苦しくなって頭がぼんやりとしてくる。そろそろ放してほしい、そう思っているとようやく唇が離れた。仗助が苦しそうな顔をしている。
「悪い、泣かせるつもりはなかった」
「あ、ちょっとびっくりしただけだから大丈夫だよ」
仗助は私の涙を拭った。本当のことなのだが、仗助はあまり納得してないようだ。仗助は優しく抱き寄せて私の肩に顔を埋める。
「はー、子供みてぇだな」
「まだ子供だよ、仗助も、私も」
「そうだけどよ〜、なんつーかカッコ悪い」
「そんなことないよ、私だって仗助が女の子と話してたらきっと同じ気持ちだと思う」
「……名前の匂いって落ち着く」
「私も仗助の匂い好きだよ」
そう言うと腕に力が籠った。