想いの果てに

幼馴染みの承太郎と付き合うようになって間もなくのとこだった。

「承太郎が料理なんて珍しいね」
「とっとと食え」
「はーい」

見た目はちょっとあれだが美味しい。

「美味しいよ」

そう言うと承太郎は少し頬を緩めた。

「ごちそうさまでした。後片付けは私がするね」

立ち上がろうとすると足元が覚束ない。倒れそうになるところを承太郎が支えてくれた。

「あ、」
「具合でも悪いのか?」

そうじゃない、そう言おうとしたが言葉にならずに私の意識は沈んでいった。

目を覚ますとベッドに眠っていた。

「起きたか」
「ごめん、いきなり眠くなって……」
「構わねぇ、」

承太郎は私に淹れたてのコーヒーを差し出した。

「ありがとう」

コーヒーを飲み干すと再び眠気が襲ってくる。ベッドに腰かけていた承太郎の肩に頭がぶつかる。

「眠いのか?」
「ん、」

***

意識のない名前をベッドに寝かせて眺める。安心しきった顔だ。普段からこんな顔をしているから男に狙われる。

最近家の郵便受けに名前の写真が届くようになった。それは名前が買い物をしているときの写真や仕事帰りのときのものだ。
犯人は捕まえたが、名前がいつまたこんなやつに狙われるかわからない。それにこういう奴等の視界に名前が入るのも虫酸が走る。こうやって家で寝ていれば俺の目にしか触れないから安全だ。

晩飯を作っていると寝ていた名前が起きてきて俺の隣に来た。もう少しで名前にバレるところだった。もう少し注意しなければいけない。

「最近寝てばかりでごめんね」
「……気にするな。飯の用意ができたぞ」
「料理上手になったよね」

俺の作った料理を美味しそうに食べては俺に微笑む名前の姿を見つめる。そうやって俺だけを見ていればいいんだ。
飯を食べ終えてぐっすりと眠る名前にキスをした。

もう俺と名前の邪魔をするものはいない。

bkm