出口のない観覧車

「花京院、なんで……」

花京院がじりじりと迫ってくる。私の右手をとり、手錠をかける。余った方の輪を部屋のベッドの足の部分にかけた。
部屋の中を動くには十分な鎖の長さだが、部屋のドアには手が届かない。

「名前にもう傷付いて欲しくないんだ」

花京院の手が私の横腹を服越しになぞる。そこには完治しているが、旅で負った傷跡が残っている。

「花京院……」
「旅の間君には何度も助けられた。敵から守るだけじゃなくて、精神的にもね。デス13の時だってそうだ。君は僕を信じてくれた。……それに名前は僕にとって大切な女の子なんだ」

花京院はベッドに座る私の隣に座って私の手を握った。
花京院の手で頭を撫でられたり、触れられたりするとどきどきする。でも今花京院に手を握られているのはいつもと違った気分だ。胸のあたりがざわざわする。

「これからは僕が守るよ」

そう言って花京院は私の身体を抱き寄せた。

***

家の一室に閉じ込められて数日が過ぎた。
花京院とちゃんと話し合いたい、そう思って手に嵌められた手錠をスタンドで壊した。ドアを開けると、家の中はしんと静まり返っている。家の中を探し回ったが花京院は見つからない。

ぺたり、ぺたりと廊下を歩いているとガチャリと玄関のドアが開いた。花京院は悲しそうな表情を浮かべている。

「……名前」

花京院は私の名前を呟くとスタンドを出した。ハイエロファントグリーンは私の身体に蛇のように巻きつき、身体の自由がきかなくなる。

「花京院、放して……」
「だめだよ、放したらまた逃げるんだろう?そんなの、僕は許さない」
「ちが」
「どうしたら僕の気持ちをわかってくれるのかな」

花京院は玄関の鍵をかける。やけに無機質な音が響いたかと思うと、花京院は身体の自由がきかない私を横抱きにしてもといた部屋へと足を運んだ。

bkm