「ここは……」
僕は白に取り囲まれていた。白いシーツ、白い布団、白いカーテン。病院だ。
誰かに手を包まれている感覚があり顔だけをそちらへむけると名前だった。
目の下は少し隈ができていて、疲れた表情をしている。名前が生きているとわかり安堵した。それに怪我もほとんど見られない。
あの日からどれくらいの時間が経ったのだろう、そう考えていると名前がうっすらと目を開けた。
「か、きょう、いん?」
「おはよう、名前」
名前の目には涙が浮かんでいる。
「よかった……目を覚まして」
「名前が無事でよかったよ。DIOは倒したんだね」
「うん……終わったよ、全部」
「そうか。終わったんだな」
「……うん」
「名前、こっちにおいで」
僕は身体を起こして腿の上を叩いた。
「怪我してるのに……」
「なら僕が隣に行くよ」
「だめ!」
「ほら、早く」
名前は椅子から立ち上がり、ベッドに乗り上げる。慎重に僕の脚を跨いで膝をついた。
「座って」
「でも」
「脚は怪我してないから」
名前はゆっくりと腰を下ろした。しかし体重をほとんど感じない。気遣って体重をかけないようにしているのだろう。名前は少し恥ずかしそうに俯き、ちらりと覗く耳が赤くなっているのが見えた。
「名前、顔上げて」
「……恥ずかしい」
「名前」
名前はおずおずと顔を上げた。近距離で目が合う。
そっと抱き締めると、とくとくと名前の鼓動が聞こえてくる。すごく心地がいい。
「落ち着く」
「……ああ」
「よかった、花京院が目をさまして……日本に戻ったら、一緒に、学校、いきたい……」
だんだんと名前の力が抜け、体重がかかる。よく眠れていなかったのだろう。
名前を隣に寝かせる。
「おやすみ」
額に口付けて名前の髪をすく。
名前の言葉にこれからの生活が楽しみになった。もう僕は独りじゃない。今まで味気ないと思っていた学校生活に早く戻りたい、そう思いながら瞼を閉じた。