閉じ込める(承太郎)

※ヤンデレ







最近、郵便物に変なものが入れられるようになった。それは私が買い物をしたり、仕事帰りに夜道を歩いていたりするときの写真だ。
しかも毎日のようにその封筒が届くから出歩くのが怖くてついに会社を休んでしまった。

家に居ると、玄関のチャイムが鳴った。ばくばくと心臓がうるさく音をたてる。もし、これが郵便物の送り主だったら……そう思うと怖くて開けられない。結局私は音を立てないようにと静かにその場をやり過ごした。家の前から遠ざかって行く足音が聞こえてほっと一息つく。

心臓の鼓動が落ち着いてきた時、携帯が鳴った。待ち受け画面には幼なじみの名前が表示されている。

「名前、俺だ」
「承、太郎……」

幼馴染みの声を聞いて涙腺が緩む。

「……泣いているのか?何があった?」
「大丈夫、承太郎の声を聞いたら安心して」
「今から家に行く。10時にちょうどにチャイムを鳴らすからそれまではドアを開けるな」
「……わかった」

そう言って電話が切れた。あと1時間の我慢だ。

***

1時間後、10時ちょうどにチャイムが鳴らされた。玄関のドアを開けると頼りがいのある幼馴染みが立っていた。

「とりあえず上がって」
「ああ、」

承太郎を通して、やかんをコンロにかける。

「俺がやる」
「でも」
「ひどい顔だ。寝ていないのか?」
「あんまり眠れなくて」
「ベッドで休んでな」
「ありがとう」

承太郎の言葉に甘えて私はベッドに横になった。横になりながら後ろ姿を眺める。承太郎がいるだけですごく安心するなあ。私にお茶を手渡すと、ベッドに腰かけた。

「ありがとう」
「何があった?」
「その、封筒……」

承太郎が封筒を開ける。

「……何時からだ?」
「1ヶ月前からかな」
「とにかくここを離れるぞ……どうした?」
「ごめん……すごく眠くて」

目を開けていられない。安心したせいかすぐに眠りに落ちた。

***

目を開けると私はいつもとは違うベッドで眠っていた。側にあった椅子には承太郎が座っている。

「ここは?」
「俺の家だ。ここに居れば安全だろ」
「ありがとう」

しばらくの間、私は承太郎の家に住むことになった。それから郵便物の送り主が会社の同僚という可能性もあるからと言われ、会社を辞めた。

「SPW財団に頼んで探しているがまだ犯人は見つからないらしい。すまないな」
「ううん、大丈夫。……そろそろアパートを探そうかな」
「それはやめておいたほうがいい。犯人がどこにいるかわからないからな」
「でも、」
「俺のことは気にしなくていい」
「……ありがとう」

***

名前にはああ言ったが本当は犯人はとっくに見つかっている。予想した通り名前の会社の同僚だった。そいつを捕まえてもう名前に近づかないという念書を書かせたから大丈夫だろう。

名前の表情があいつに染められていると思うと虫酸が走る。あんな表情は見たくない。
犯人が捕まったと知れば名前は家を出ていくだろう。だから犯人が捕まったことは黙っていることにした。
これで安心して名前と暮らすことができる。

bkm