アヴドゥルさんが私を外出させてくれなくなって1ヶ月ほど経った。私が不自由しないようにと部屋には何でも揃っているけど、アヴドゥルさんが仕事に行っている間、ひとりで部屋にいるのはすごく寂しい気持ちになる。一緒に出掛けて買い物をしていた頃が懐かしく思える。
高いところに取り付けられた窓から見える空はとっくに暗くなっている。これくらいの時間には、いつも帰ってきているはずなのに、まだ帰ってこない。
アヴドゥルさんに何かあったのかもしれない。もしこのまま帰ってこなかったらどうしよう。
気を紛らせようと本を広げてもなかなかページが先に進まない。
「アヴドゥルさん……」
雫がぽたりと本に落ちた。
***
すっかり遅くなってしまった。家に帰って真っ先に名前の部屋に向かい、ドアを開けた。
「名前、遅くなって済まない、っ」
涙を流している名前と目が合う。
「どうした?!具合が悪いのか?」
そう尋ねると名前は私に抱きついて泣いた。
「アヴドゥルさんが、中々帰ってこないから、何かあったんじゃないかって思って、」
「っ……」
そう言われて胸がずきりと痛んだ。名前を守りたい、そう思ってこの部屋に閉じ込めているがこれは私のエゴだ。本来ならば拒絶されても仕方がないことしている。こんなことをしておいて名前に心配される資格なんてないのかもしれない。
私がいなくなれば名前は自由に外に出れるのだ。それなのに拒絶することもなく、私を思って涙を流している、そんな名前が愛しいと思った。
やはり外には出したくない。
泣いている名前を抱きしめながらそんなことを考えていた。
「私はどこにも行かない。必ずここに帰って来る」
だから、毎日私の帰りを待っていてほしい。