番外編01

※微裏








お互いの気持ちが通じて穏やかな日々が続いた。

付き合うようになって、時々手を求められることがある。今日がそんな日だった。

ソファーに座ってテレビを見ていると吉影さんの手がそっと私の手に絡められる。テレビから吉影さんに視線を移すと、私の手を口元まで持っていく。
吉影さんの口元から赤い舌がのぞき、私の手をべろりと舐めた。なんだか見てはいけないものを見ている気がして、私の心臓はいつも以上にうるさく音をたてている。

吉影さんは私の顔を見て反応を楽しみながら私の手を舐めている。

「……気持ち良さそうだね」

その一言で羞恥心が膨らむ。人に手を舐められて感じているなんて恥ずかしい。でも、吉影さんに毎日のように手にマッサージをされたり、舐められたりして私の手は敏感になってしまった。
少し触られるだけで私の鼓動は早く脈打つし、早く続きをしてほしいと思う。
それもこれも吉影さんのせいだ。

そんな気持ちをこめて視線を送ると、吉影さんは目を細めた。

「嬉しいよ」
「っ、」

私が黙ると手を掴みながら近付いてくる。身体がだんだんソファーの肘掛けのほうに倒れていき、ついに背中がついてしまった。吉影さんはもう片方の手で私の足をソファーに乗せ、私は完全にソファーに仰向けに寝る形になった。
吉良さんが私の足の付け根あたりを跨ぎ、覆い被さってくる。

「名前……」

耳元で吐息まじりに名前を呼ばれ、私の身体はぞくりと粟立った。吉影さんの顔は手を舐めていたときよりも余裕のない顔をしている。
私は吉影さんの首にそっと腕をまわした。

bkm