買い物をしている途中に雨が降ってきた。家を出るときは晴れていたため傘は持ってきていない。
「雨、降ってきましたね」
「そうだな、そこの店で雨宿りするか」
私たちは近くのカフェに入ることにした。ドアを開けると店内はコーヒーの香りが漂っている。店員さんに案内されて席につきメニュー表を捲った。美味しそうなケーキの写真が並んでいる。
「どれにしよう……」
どれも美味しそうで悩むなあ。アヴドゥルさんはもう決めたようでぱたりとメニュー表を閉じた。
「あ、ちょっと待ってください……」
「ゆっくり決めていいぞ。雨宿りだから急ぐ必要はない」
「はい」
チョコレートケーキが目に留まる。これにしよう。
店員さんを呼んでそれぞれ注文した。
「そういえばアヴドゥルさんは何を頼んだんですか?」
「コーヒーとケーキだ」
私は思わずにやける。
「随分にやけているな」
「なんか意外だったので……アヴドゥルさんも甘いもの好きなんですね」
「ああ」
思わぬ一面に頬が緩んでいると注文したコーヒーとケーキが運ばれてきた。甘いもの、か……。今度店長にお菓子の作り方を聞こうかな。それに店長ならアヴドゥルさんのことをよく知っているだろう。
「名前、どうした?」
「あ、ボーッとしてました」
フォークを取りケーキを口に運ぶ。
「美味しいです」
「そうか、よかった」
アヴドゥルさんが微笑む。いつの間にか雨は止んでいた。