家に帰ると名前がこの世界に来た時の服装をしている。いかにも外国から着た旅行者の服装だ。確かに露出を抑えたエジプトの服装は日本人の名前にとっては暑いのだろう。ましてや今は夏だ。だが、ここで暮らすには露出度が高い。エジプトでは女性が肌を出したり、身体のラインが分かる服を着たりしていると男性の視線を集めてしまうためよくないのだ。

「あー、名前」
「はい？」
「その服装で外に出たのか？」
「家の回りなら少しだけ出ましたけど」
「っ！……私が言わなかったのも悪いがその服装で外に出るのはやめたほうがいい」
「まずいですか？」
「あぁ、ここでは顔と手以外を出すのはよくないんだ。足を出してるだけで目立つし男の視線を集める。それに私が出掛けている間は名前の身を守りきれない。エジプトが暑いのはわかるがせめて家の中だけにしてくれ」
「……ごめんなさい」

名前はしゅんとしている。まるで叱られた子犬みたいだ。

「次から気をつけてくれればいいんだ。別に怒っているわけじゃあない」
「はい」

暑いかもしれないが名前の身の安全には代えられない。