彼の気持ち

「名前!!」

リビングの扉が勢いよく開けられたかと思うとジョースターさんが現れた。

「ジョースターさん!お久しぶりですね」
「名前は元気そうじゃのう」

ジョースターさんは私を抱きしめる。

「アヴドゥルは留守か?」
「はい、仕事です」
「そうか、アヴドゥルから話は大体聞いた。大変だったじゃろう」
「いえ、アヴドゥルさんに最初に出会えたのでそんなに大変じゃなかったです」
「アヴドゥルが聞いたら喜ぶだろう。ところで名前はアヴドゥルと付き合っているのか?」

ジョースターさんがにやにやしている。本当はもう知っているんじゃあないのかな。

「はい」
「アヴドゥルは元気になったようじゃの」
「それはどういうことですか?」

ジョースターさんは急に真剣な顔をする。

「アヴドゥルは名前が死んだ後かなり落ち込んでいたんじゃ。名前は気付かなかったかもしれないが旅の間アヴドゥルはずっと君のことを気にかけていた。女性の身で肉体的にも精神的にもきつい思いをしているんじゃあないのか、いつも平気な顔をしているが本当は無理をしているんじゃあないのか、とな。わしとアヴドゥルが同室になったときや見張りの番をしているときによく言っていた。アヴドゥルの口から出てくるのはいつも君のことだった。」
「……」
「だから、名前がこの世界に来たのはとても嬉しく思う。ふたりが付き合っているなら尚更だ」

アヴドゥルさんがそんなことを言っていたんだ。旅をしているときは全然気付かなかった。

***

「そろそろわしも帰るかの。承太郎がこの近くのホテルに泊まっているようじゃから会ってから仕事に戻るとしよう」
「わざわざ忙しいのに来ていただいてありがとうございます!」
「いいんじゃ、名前は大切な仲間だからな」

ジョースターさんは帰っていき、入れ違いになってアヴドゥルさんが帰ってきた。

「お帰りなさい、アヴドゥルさん。ジョースターさんが来てましたよ」
「久しぶりに会いたかった」
「アヴドゥルさんによろしくって言ってました」
「そうか、……お茶飲むか?」
「いただきます」

さっきジョースターさんに言われたことを思い出した。私のことを気にかけてた、か。

「ほら、」
「アヴドゥルさん!」
「どうした?」
「私もアヴドゥルさんのことをずっと見てましたよ」
「それはどういう………まさかッ!」
「ジョースターさんが、」
「もう言わないでくれ……」

アヴドゥルさんが気まずそうに目を逸らす。

「私は嬉しかったです!」
「わかったから言わなくていい」
「っ!」

アヴドゥルさんが私を抱きしめ顔を胸に押し付ける。ちょうど心臓のある位置だ。アヴドゥルさんの鼓動が早い。

「アヴドゥルさん、」
「わかったか?」
「はい……」

アヴドゥルさんはいつも落ち着いてどきどきしてるのは私だけだと思っていたから嬉しくなった。

bkm