仕事

「アヴドゥルさん、お願いがあるんですが」

夕食後に名前が改まって言った。

「どうした?」
「この近くで求人を募集しているところを知りませんか?」
「仕事をしたいのか?」
「はい。このまま家にいるのも心苦しいので」
「そうか。じゃあカフェを経営している友人に今度聞いてみよう」
「ありがとうございます。それから、私にアラビア語を教えてもらえませんか?ここで生活する上で必要だと思うので」
「それくらいお安いご用だ」
「ありがとうございます!」

彼女の目が輝いている。こういう顔をされると名前が望むならなんでもしたいと思ってしまう。

次の日私は友人に名前のことを頼むと快く引き受けてくれた。アラビア語は話せないのでまずは厨房からということになった。その旨を伝えると名前は喜んでいた。

「明後日からということになったよ」
「ありがとうございます!」
「大したことじゃあないさ。夕食を食べたらアラビア語の勉強をするか」
「はい!」

***

2日後、私はアヴドゥルさんの友人が経営しているカフェへ向かった。アヴドゥルさんの友人は笑顔で迎えてくれて、私に優しく仕事内容を説明した。とりあえず、しばらくは調理場で皿洗いや調理の補助にまわることになった。

従業員の人々も親切な人ばかりだ。私が質問すると聞き取りやすいようにゆっくりと簡単なアラビア語で話してくれる。

「初仕事はどうだった?」
「みなさん優しい方ばかりで働きやすかったです。といっても聞くことが多かったんですけどね」
「初めは誰でもそうだ。名前は大学生と言っていたがアルバイトをしたことは?」
「飲食店でアルバイトをしています。仕事内容はそれほど変わりませんが、言葉の壁が大きく感じました」
「そうか、じゃあ早く覚えるように今日はみっちり勉強するか」
「うっ」
「ははは」

bkm