※微裏?
承太郎の様子がおかしいと感じていた。承太郎に尋ねてもなんでもないと言われ、それ以上は何も聞けなかった。だから、この違和感を身を以て確信することになるとは思ってもみなかった。
承太郎の家に遊びに行き、飲み物を飲んだら眠気に襲われ、気がついたら手錠をかけられた状態で畳の上に横たわっている。
「起きたか」
私の背後で聞き慣れた声がする。身体ごと振り返ると、承太郎が胡座をかいて私を見下ろしていた。いつもとは違う、冷たい瞳。
「承太郎がやったの?」
その瞳に怯みそうになったが、できるだけ冷静さを装って尋ねた。
「ああ」
「どうして、」
「好きだからだ」
この時手を拘束されていなければどんなに幸せだっただろう。素直に喜ぶことができない。
「じゃあ、何で」
「お前は花京院が好きだろう」
違う。もちろん花京院は好きだが承太郎に対する好きとは違う。承太郎のことは異性として好きだ。
「ちがっ、んん」
否定しようとしたら承太郎に唇を塞がれた。荒々しくて有無を言わせない意志の強さが感じられる。
「っ、ちょっと待って」
「うるせぇ」
承太郎は私を話を聞かず、先に進んでいく。私の身体を跨いで馬乗りになり、服の裾を捲りあげる。脇腹に手が直に触れられ、熱い。いつの間にか冷たかった瞳が熱っぽく変わっている。さっきまでの荒々しさも陰を潜めている。
今はそんなに怖くない。私は承太郎の頬を両手で包んだ。
「承太郎、好きだよ」
承太郎の瞳が少し開かれる。すると溜め息を吐いて身体を起こし、私の上から退いた。私も起き上がると承太郎の大きな手が私の頭をぐしゃりと撫でた。
「承太郎?」
承太郎の瞳は目深にかぶられた帽子で見えなかった。