名前のやつ遅いな。名前がおやつを買いに行くと言ってから随分経つ。時計を見ると21時をまわったところだった。一向に帰ってくる気配がない。
まったく、いつまで僕を待たせるつもりだ。時間を持て余し、新聞に目を通していた時だ。なんとなく目を通していると地元の不審者情報が目に留まった。下校中に車から下りてきた男が女子高生に声をかけたという記事だった。
場所はここからそう遠くないところだ。名前は大丈夫だろうか。まさか、不審者に会ってはいないだろうな。考え始めると悪い方向に向かってしまう。
僕は名前を探しに外に出た。すると、ちょうど買い物袋を持った名前が帰ってきたところだった。
「ただいま」
「ああ」
「なんで外にいるの?」
「随分と遅かったな」
「少し雑誌読んでたの」
人の気も知らないで。僕は思わず名前を抱きしめた。
「寂しかったの?」
「……」
いつもなら噛みつきたくなるような軽口だが、今日はそれがひどく安心した。