暖かな風がふわりとカーテンを揺らす。白い純白のカーテンがなびく窓際に彼は座っていた。
ぺたぺたと裸足で歩く足音と、風の音が響くこの部屋に千歳はいた。わざとらしく足音を出しながら近付く俺に気付いたのか、肩を叩く前に外を向いていた顔を此方に向け微笑んでくれた。

『白石、どげんしたと?』

お世辞にも余り綺麗とはいえない字でノートに書き出された文字。別になにか話があったわけではないから、首を横に振りなんでもないという意味を込めてにこりと笑う。その反応の意味がわかっていないのか、彼は不思議そうな表情を一つ見せた後またノートへ文字を書き出し始めた。
すらすらと進む手元を近付き覗けば、そこには『しらいし、なにかあっ』まで書かれていて思わず噴き出した。突然笑われたことが不服だったのか、ぎろりと睨まれる。
そんな千歳の頭に手を置きポンポンと頭を撫でてやれば、釣り上げた瞳から一変して目尻を下げ幸せそうな顔をしている。そんな千歳の前髪を軽く掻き上げ額にキスをし、耳元で愛の言葉を告げる。

その言葉に少しだけ泣きそうになった千歳の唇にキスをして、そんな顔を見てないことにした。
だって、きっと、千歳は俺が言った言葉がわかってしまったから。付き合ってから何度も言った言葉を、声を、音を、千歳はもう聞くことができない。だから、言わないようにしていたのに、思い出させないようにしていたのに、自分のふがいなさに呆れて物もいえない。
唇を離して笑顔を見せてやれば、千歳も笑顔を返してくれた。そしてまたノートへ向かい、素早く文字を書き、出来上がった文字を見せてくれた。

『大丈夫、ちゃんと俺もすいとおよ』

そこには、やはり綺麗とは言いがたい文字で愛の言葉の返事が書いてありその文字を見て、聞こえるはずのない千歳にお礼を言った。

( 好きで、愛していて、ごめんなさい )




引き続き日記ログ。突然なんか書きたい!って思い付いた文字くっつけたら設定間違えましたすみません。事故で耳が聞こえなくなって、精神的ショックで喋れない千歳と、千歳が好きで好きでしょうがないマイナス思考で自己中心的な白石のお話。

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