今日は珍しく千歳と撮影が一緒だ。いつもは白石とセットで撮影に望むのだが、ドラマの撮影が抜けられないらしく急遽千歳と一緒になった。

今日のイメージは"白"と"黒"らしい。
白い服を着せられた俺と、黒い服を着せられた千歳。
千歳は背が高くスタイルが良いので黒い服が映えている。
ずっと見ていたことによって視線に気付いたのか、スタッフと話していた千歳が「なんね?」と声をかけてくれる。ニカっと笑い返せば不思議そうな顔をしてスタッフとまた会話し始めてしまった。
撮影が一緒なのが、久しぶりなのだから少しくらい構ってくれればいいのに、と思っていると、カメラマンの準備が出来たのか、開始しますの言葉が聞こえた。

最初は、千歳から。シャッターが切られる度、ポーズが変わり表情も変わる。
可愛らしく写っていたかと思えば、セクシーに写っていたりと忙しい。そんな千歳の撮影を見続けていると、いつの間にか交代の声が聞こえ次は俺の番だ。

休憩に入る千歳とすれ違うときに、耳元で「謙也見つめすぎやね。…後でくっつくけんよか?」と挑発的に誘われ、何故だかそれが悔しくて、衝動的に千歳に口づけた。
幸い誰にも気付かれなかったが、驚いたのか千歳が目を丸くしている。

「…ほな、行ってくるわ。…千歳は俺だけ見てればええで」

ぺろり、と千歳の唇を舐めてカメラの前へ向かう。

千歳程表情や、ポーズにバリエーションがあるわけでは無いが、ポーズ指定に添うよう努力する。

被っている帽子に手をあてて、顎を上げ睨み付ける様にカメラに視線を向ける。
何度かシャッターの音が聞こえた後、ポーズを変え、口元に手を当て、正面からカメラを見据える。
その時、休憩に入っている千歳が目に入った。
俺が言ったことを聞いてくれてるのか、回りにスタッフが居るにも関わらずしっかりとこちらに視線を向けている。
そして、一瞬だが視線が交差した。その一瞬を逃さんと、口端を上げ、声を出さずにち、と、せと言えば一拍間が空いた後顔が赤くなるのが見えた。

「謙也くん、視線こっちむけてもらってもいいかな?」「あ、すみません」

本当は千歳のことを見ていたかったのだが、カメラマンに呼ばれてそれは叶わなくなった。
どれぐらい撮影したかはわからないが、カメラマンからOKの合図がでた。何枚か確認させてもらい、特に問題が無かったので一度休憩を挟み、ツーショット撮影に移る。

その休憩の言葉を聞いて、すぐに千歳の元へと急ぎ、スタッフに囲まれている千歳の手を引き連れ出す。
そして、人通りが少ない廊下の隅に千歳を連れていき、押し付けるように唇を合わせた。


( ん、…謙也はカッコよかね。でも自意識過剰じゃなかと? )
( ……そんな俺でも好きやろ? )
( ふふ )
( ふふってなんやねん! )
( なんでも無いけん気にしなくてよかよ。撮影始まるけん行くばい )
( …千歳、好きやで )
( 俺も謙也のこといっちょん好いとうよ )


( キミは俺だけ見てればいい )

0915
わけわからん