カシャカシャとシャッターが切れる独特の音がする。
俺はカメラが好きだ。写真は口下手な俺でも表現出来るし、何より思い出として綺麗に残る。
基本的に風景を撮影するのが好きだが、謙也だけは別だ。
俺は謙也が好きだ。友情ではなく、恋愛として――――。

カシャッと音がして、またシャッターが切れる。
はだけたシャツから見える首筋に触れたい。

「謙也、視線だけこっち向いて?」

俺の言葉を聞いて、素直に流し目になってくれる謙也。
その視線を受けて、またシャッターを切る。

「…ん、よかね。お疲れ様」

撮影した画像を確認して、終了の言葉をかける。
他のスタッフからお疲れ様と声をかけられ、猫のように背筋を伸ばす謙也が視界の端に映った。
シャツの隙間から綺麗についた腹筋が見えてすぐに視線を反らし、撮影したばかりの画像をパソコンに入れていく。
見慣れた筈の彼の身体のラインが凄く厭らしく感じた。
赤くなる頬を隠すように画面に食い入る。

画面には沢山の謙也が映っている。一枚一枚開いては、使えるかどうかの確認をして、必要ないものは消していく。
そんな作業を繰り返していると後ろから画面に映っている張本人が現れた。

「ほー…やっぱあれやな」
「なんね?」

感心するように画面を見ていた謙也だったが、俺が使っていたマウスを奪うと勝手に画面を変える。
変えられた画面には最後に撮った一枚の写真が映っている。
その写真を見て満足そうに微笑むと「やっぱ、俺のこと一番綺麗に撮ってくれるのは、千歳やな」と、俺にしか見せない戯けたような、絶対に撮影では見せない表情をしてくれた。
なんだかそれが嬉しくて、ここがスタジオとか、スタッフがいるとか、謙也の了承を貰ってないとかそんなこと全て忘れて、目の前にある謙也の唇に噛み付くようにキスをした。

( ファインダー越しじゃないキミがスキ! )

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