光の誕生日なのに喧嘩した。
喧嘩したと言うか一方的に怒っているが正解だ。

誕生日は一緒に居ると言ってくれたのが嬉しくて、昼飯でも誘ってやろうと思い光の教室に向かったのが悪かった。
誕生日だからか、それともいつものことなのか、女の子に囲まれている光がいた。
面倒と顔に書いてあるが、邪険にすることはせず、一人一人相手をしている。
その内の一人が光に触れた。機嫌が悪いときに俺が触れると怒るのにその子が触れても何も言わなかった。
その事実がただ悲しくて、光の教室から急いで離れた。

当てもなく駆け出して、屋上へ辿り着く。小春に謝罪のメールを送って五時間目はサボることにした。

日陰に寝転んで空を見上げる。この鬱然な気持ちと裏腹に空は青く綺麗に広がっている。

「…ひかるのあほ…」

ぽつりと呟き、寝返りを打つ。

俺が女の子だったら光の態度は変わっただろうか?もっと優しくしてくれるだろうか?喧嘩ももっと減るだろうか?
いくら考えたって俺は男だ。ただ考えるくらいは許されるだろう。

例えば女の子だったら、お互い恋人だと家族に紹介することが出来る。例えば、人目を憚らず手を繋いで歩くことが出来る。…光の子を産むことだって出来る。
今ほど女の子に産まれたかったと思うことはないだろう。

出来もしないことを考えていたら悲しくなってきて、目を瞑る。今は何も考えずに眠ることにしよう。


――――――

目を覚ませば、青かった空はオレンジ色に変わっていて携帯には小春や白石からのメールがひっきりなしに届いていた。
急いで飛び起きて教室へ戻り、鞄を持って部室まで走れば部室には既に白石しかいなかった。


「ユーウージー?今までどこいってたん?」
「すまん、白石…!ホンマ悪いと思ってる!」


土下座する勢いで頭を下げ謝罪の言葉を述べれば、はぁ、と溜め息を吐かれ「しゃーないなあ」と聞こえた。

「ホンマか白石!」
「今回だけやからな。そんかわり、明日は朝一で来るんやで」
「おおきに!俺白石のことメッチャ好きやー!」
「はいはい。ユウジはホンマ調子ええなあ」

子供をあやす様に優しく頭を撫でられる。いつもなら、こんなことされたら払い退けるのだが許して貰えたのが嬉しくて思わず笑みが溢れる。

その時、ガチャンと荒々しい音がして部室のドアが開いた。


「…ユウジさん」

そこには既に着替えた光がいて何時もより低い声で俺の名を呼ぶ。情けない事に、反射的に身体が跳ねる。

「っ、光…?」

恐々と声を掛ければ、光が歩み寄って来て手首を引っ張られる。

「…帰りますよ」

じっと睨み付けられながら低い声で言われた。

「お、おう…白石もお疲れ…」

背後で「おつかれさん」と言っている白石に光が小さくお辞儀をして無言で部室を出る。

校門を出て足早に帰路に着くが、如何せん歩く速度が早すぎてついていくのがツラい。手首を掴まれているため歩く速度を遅めることも出来ず掴まれた右腕が痛い。

「ひかる!」
「…なんすか」
「痛いし、早いわ」

無言で手首を離された。そして、先程より幾分か歩く速度を遅くしてくれた。

「…何怒ってるんや」

一歩前を歩く光に聞こえるか微妙な声で呟いたが、光にはしっかり聞こえていたようでその場にピタリと止まる。

「……部長には触らせるんですね」


一歩後ろに立ち止まるっているから、表情は見えないが声色的に確実に怒っているだろう。

「…光やって、女の子には触らせるやん」
「別にそんなことないです」
「嘘や!今日かて、お昼に女の子にデレデレしてるとこ見たで!」

俺が突然大きな声を出したことに驚いたのか、振り向いた光が珍しく一瞬だけだが目を丸くしていた。

「デレデレなんてしてへんわ!ユウジさんやって何で部長の前でそんなに無防備なんですか?」
「今日やって、会えんの楽しみにしてたのに来いへんし、約束の時間になっても連絡無いし、俺がどんな気持ちで待ってたか知ってますか?」


目を丸くしたのは本当に一瞬だけで、すぐに眉を釣り上げ矢継ぎ早に思っていたことを伝えてくる。光が俺のことを想ってくれていたなんて知らないし、白石に嫉妬していることも知らなかった。
今日を楽しみにしてくれてるのも知らなかった。
今度は俺が目を丸くする番だ。
光は言い終えた後、しまったと言わんばかりの表情をして黙り込んでしまう。
お互い話さず、無言の気まずい空気が流れる。どうしようか悩んでいると光から手を差し出された。

「…ハァ、もういいっすわ。はよ帰りましょ」


恥ずかしいのか、視線を反らしながら、ピアスがついている耳が少しだけ赤い。
差し出された手を握りしめ、勇気を出してその手を引く。





ひかたん用だったのですが、期間開きすぎて何がなんやらわからなくなったので諦めました。女体化にしようとして失敗したのしか覚えてない。何書きたかったんだろうね。

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